沖縄旅行(5)

三日目です。
朝から離島の久高島へ渡り、午後に本島に戻ってから平和祈念公園ひめゆりの塔を廻り、市内に帰って夕食…という予定。


今回の旅行で私にとっての目的の一つが久高島へ行くことでした。
大学時代私は、琉球文化・文学の第一人者である外間守善教授のゼミ生でした。
そこで沖縄の古典文学「おもろさうし」を中心に「神の島」と言われる久高島の文化を学びました。
ここには古代天皇の成り立ちにも通じる国造りの神話が残っています。その神話と古事記の類似点を通して共同幻想の成り立ちを考察する…ってのが私の卒論のテーマでした。
不真面目な生徒だったし、研修旅行にも参加せず(丁度結婚したばかりで、学校に通うだけで精一杯な頃でした)、私はこの島に関して実際は何も知らないまま卒業してしまい、そのことがなんだか未提出の宿題を抱えているような気分だったのです。
そりゃもう時効だし、いまさら宿題の未提出を責める人は誰もいませんが…なんとなく、ずっと心に引っかかっていたのね。
沖縄に行く機会があったら、ぜひ訪れたい場所だったのです。


久高島にいくには沖縄本島知念岬近くの安座真港から高速船かフェリーに乗って渡ります。時間は20〜30分くらい。
行きは高速船に乗って行きました。



高速船はかなり年季が入った船です。燃料の匂いが強烈。
画像右側は船内。荷物も乗客も一緒に運びます。
乗り合わせた島のおばぁ達の会話は全く聞き取れません(汗)。


久高島は「神の島」。普通の島とはわけが違い、行ってはいけない場所やタブーがいろいろとあります。
御嶽の立ち入りは基本的に禁止だし、島の西側は葬所になっていて穢れの場所です。最北端のカベールは神聖な場所なので行ってはならないとか、島のものは小石一つ持って出てはいけないとか、細かな注意事項があるのです。
うっかりタブーを犯すと良くない事が起こる、なんてことも言われてるし。
事前にその話をお嬢にしたら、過剰に怖がってしまい大変でした(汗)。
「畏れを抱くのは大事なことだけど、敬虔な気持ちでいる人間に神様は罰を与えたりはしないよ」と言い聞かせつつ、島を廻りました。実は私も怖かったんです(^^;;)。なので、祈るような気持ちで。



島ではレンタサイクルを借りて自転車で島内を廻りました。
人がいるのは南端の集落付近くらいで、島の奥に入って行くと、ほとんど人には会いません。
時々畑仕事をする島の人に会ったりする以外は、ただただ草木の茂る道が続いている。





整備されている道もあれば、土の道も、道無き道もある。
どこまでも野性の草木と青い空。
突き当たると海が見える。



同じような風景が続くので、現在地がよくわからない。
突然入ってはいけない領域に踏み込んでしまったらどうしようと思いつつ自転車を走らせているのでドキドキします。



(画像左)集落の近くに来ると牧場があります。牛がのんびり草を食んでいました。
(画像右)集落の様子。


島を一回りしたあと、港近くの「食事処 けい」でお昼ご飯を食べました。
島には2件だけ食堂があります。
海ぶどう丼とサーターアンダギーが絶品!との口コミがあったので、こちらに行ってみたのダ。



海ぶどう丼、噂に違わずすっごく美味しかったです!(食べかけてから撮影していないことに気がつきました。食べかけ写真でお目汚し失礼(^^;;))海ぶどうの上にはカジキのお刺身と蛸の酢漬けが載っています。
セットには野菜の酢の物と沖縄そばの小鉢がついていますが、こちらも美味しい!
食べる前は、失礼ながらここで食堂の味に期待してもしょうがないかな、と内心思っていたのですが、全くそんなことありませんでした。大満足。
サーターアンダギーも買って帰りました。こちらは家に帰ってから食べましたが、あっさりした癖のない甘さで美味しくて、パクパク食べられます。




食後は浜を散策することに。
浜に行く途中、港で島の先生方の離任の場面に出会いました。
船が何度も汽笛を鳴らし、連絡船のデッキで離任する先生方が、港で見送る人たちが、お互い手を振り合い別れを惜しんでいました。
春ですね。セツナイなぁ。


島の南側の海辺に出てみました。



たわわに実っているアダンの実(パイナップルみたい!)



珊瑚の海。
他にだれもいない。



足元の浜辺を目を凝らして見ると、砂浜に見える場所にあるのは砂ではなく、珊瑚や貝殻の欠けらの堆積なのでした。
手に取るとカラカラと軽く音を立てる白い欠片の、膨大な集まり。
これら全てに、かつては命があったんですよ…あまりの大きさに茫洋としてしまいます。
この浜ができるまでの圧倒的な歳月を思うと、やはりここは神の島なのだと深く納得するのです。



浜ではたくさんの生き物が観察できます。
(画像左から)蟹、なまこ、うに。小さな魚もたくさんいました。
手付かずの自然の中で、ありのままの姿で生きるものたち。


帰りは、来る時に利用した高速船ではなく、フェリーで戻りました。
島のどこにいたの?というくらい、観光客らしい人が30人くらい乗り込んだのにはちょっと驚きました。
この船も燃料の匂いがヒドイ。マスクをした上にハンカチをあてて、悪臭に耐えました。


ほんの数時間の滞在でしたが、久高島に行くことができて本当によかったです。
やはり独特な時間と空間を持った島でした。
怖いような、畏れ多いような、不思議な場所。ちょっと異世界を見たような、ね。
そのせいか、いろんなことを考え、感じることができました。目に見えない力に触れられた気がします。


続きます。