バウハウス・デッサウ展

宇都宮美術館で開催中の「バウハウス・デッサウ展」に行ってきました。



ホントにもう、この美術館の企画展は私のシュミのど真ん中を突いてくるから嬉しくってたまりません。
「デッサウ」とは、バウハウスが設立の地であるヴァイマールから最初に移転した場所の名前です(後にベルリンに移転)。
デッサウ校時代での活動(1925〜1932)はバウハウスの黄金期と言われてます。



(グロピウス設計のデッサウ校校舎:資料画像)


展示は伝説の美術学校バウハウスの授業の様子がうかがえる作りになっていて、実にわくわくします。
ラスロ・モホイ=ナジの空間研究課題、ヨーゼフ・アルバースの素材研究、ヴァシリー・カンディンスキーの色彩と形態の演習、パウル・クレーの色彩論…タイポグラフィ、舞台装置、写真、工業デザイン、建築に至るまで、理念と創造に溢れた先進的な教師陣の情熱が伝わってきます。
授業を受けた生徒のノートなども展示されていて、臨場感も抜群。当時の学生さんたちはそりゃ楽しかったろうなぁ〜。羨ましい。
造形芸術から離れた舞踏やパフォーマンスなどの演習の紹介もありました。多彩な活動をしていたのですねぇ。


直線と曲線を組み合わせたこの時代の独特の造形は悶絶ものですが、中でも集大成である建築の素晴らしさには惚れ惚れします。
敬愛するグロピウス校長のデザインしたバウハウスのデッサウ校舎の模型には激萌え!でした。
…欲しい、あの模型!
校長の居室の再現などもありました。
そこに身を置いてみると芸術の最先端にいた彼らの興奮を感じるような気がします。
とにかくカッコいい。
アルマがマーラーを捨ててグロピウスに走ったのもなんかわかるような気もする(気のせいか)。


私は同時代のロシア構成主義がとても好きなのですが、そういう横の関係に触れられていたのも嬉しかったです。
オランダのデ・スティル、イギリスのアーツアンドクラフト、ロシアのシュプレマティズムや構成主義などなど。関連でリシツキーの作品も展示されてました(やっぱりめっちゃカッコいい!)。


バウハウスというと「モダンデザイン」という、建築・インテリアのくくりでとらえられることが多いですが(実際、それが本質なのでしょうが)私としては、やはりこれは「学校」であり、新しい芸術の実験の場だというとらえ方でこそワクワクするものです。
なんかもう、創造の対象を分析し解説され教授されることが楽しくてたまらないんですよ。
芸術というのは本当はすごく本能的・直感的なものなのだろうけれど、あえて「学問」的な論理や分析といったアプローチをとるところに嬉しくなってしまうのです。
20世紀初頭の芸術活動にはこうした「理論的な」潮流があちこちに興って、私はそのあたりの作品にヤラれっぱなしです。
作品そのものを投げかけて鑑賞者にゆだねる展示と違い、展示の場の中に特定の理念を再現させることを目的とする今回のような企画は観る人を選ぶようにも思いますが、身近な「家具」「建築」「日用品」などの造形をよすがにしながら、ことさらに「空間」を意識し、芸術運動の流れを丁寧に伝えたステキな企画展だと思いました。
その場に身を置いて対象物を鑑賞していると、まるっと時代を超えてバウハウスの教室の生徒になったような気分になり、楽しかったです。


美術館を出ると外は木枯らし。


沿道のオブジェ、サンドロ・キアのブロンズ作品「ハートをいだく片翼の天使」も寒空の下佇んでおります。
冬枯れの森の向こうに午後の陽が輝いておりました。
まだ春は遠そうね。



宇都宮美術館での「バウハウス・デッサウ展」は3月29日まで。
ここが巡回最後の場所のようです。