「ハッピー・フライト」

「観たい!」「連れてって!」「いつハッピー・フライト観に行くの?!」とボクちゃんにせっつかれ、行ってまいりました。TVスポットや特番の効果ですな。CXの作戦勝ちか。


矢口史靖監督作品ということで期待していたのですが、これまでの作品とはちょっと雰囲気が違っておりました。コメディだという部分は変わらないんですけどね。
これ、ストーリーの大きな柱というものが無いんですよ。
したがって大団円でのカタルシスも無い。
すごく平坦な群像劇でして…でも、それがダメかというと、そうでもない。
刺激も感動も極薄なんだけれど、ふにゃふにゃと楽しいのです。なんか、不思議な作品でした。
全編、航空業界で働く現場の人たちの様子をデフォルメしてコメディとして描いている「だけ」なのですが、その妙なマニアックさとか、舞台裏の種あかしみたいなものとか、同じ職場で働くいろんな立場の人たちの思惑の違いとか、要するに今まで見えていなかった(見ることができなかった)ものを覗く楽しさみたいなものがあります。
たぶんボクちゃんにとっては「はたらくおじさん」(by タンちゃん&ペロくん…古い?(汗))みたいなもんだったと思います。
でも、さすがに自分から連れてってと騒いでいただけあって、難しい航空用語が行き来するシーンなど多かったにも関わらず、楽しげに観ていました。
観終わった後も操縦桿を操作する真似なんかしてウケてたし。パイロットはやっぱ魅力的だよね!
私はその昔、NASAのコントロールセンターで働く人にめちゃめちゃ憧れてた時期があったんですよ(これも映画の影響ですけどね。「ライトスタッフ」の)。なので、管制塔やコントロールセンターのスタッフの様子を見るのが楽しかったです。
ああしてコンピューターに囲まれて秒速で現状に対処してゆくスタッフってのがすっごいカッコよく思えちゃうんですよねぇ〜。


つかみどころのない作品ではありますが、案外、矢口監督の良さってのが顕著に現れているように思います。
対象の描き方が実質的、というか。この監督の中での「コメディ」というもののあり方って、こうなんだなぁ、というのがわかる。
キャラクターは皆、わかりやすい役割やポジションが与えられてて、そこで動くのです。
あくまでも「動き」なので、深い感情はともなわない。ごく順当な感情(反射、といってもいい)で人物たちは可笑しい動きをする。
そこが結果的にドライというか、爽やかというか、観る者に負担を強いません。だから登場人物が多くてもあっさりと把握できる。
コメディにはこういったアプローチでの人物描写は不可欠だと思います。人物の感情が深すぎると笑えなくなったりするし。
感情が過多でなくとも個々のキャラは立っているので、親しみ(この人、これからどうなるんだろう?という興味とかも)を湧かせる力は十分にあります。
あ、それから選曲もいつもセンスがいいんですよね。ホントにもう、今回はシナトラ一発で誘われました。シアワセ〜な気分にさせてくれる曲、というのもコメディには不可欠です。

全編ANAのコマーシャルだったり、CXの過剰宣伝がウザかったり、ストーリーにこれといったポイントがないところにやっつけ感が漂ってたりして、おそらく評判はたいして良くないだろうなぁと予想されますが、めげずに矢口監督にはこれからもこの路線で頑張って欲しいと思います。
だって、日本の中でこんな奇妙で可笑しいコメディ作れるの、きっとこの人くらいだろうし。
個人的には全編ANAのコマーシャルだってのも好きなところですよ。
全編FedExのコマーシャルだった「キャスト・アウェイ」なんか、もーーアタシは大好きだしね。資本との癒着(笑)。
そういう映画があっても楽しいじゃん!と思います。実に経済的だ。
おかげでちょっとANAに乗って旅に出たくなったもんね。シナトラ聴きながらラスベガスなんて行けたら最高♪


ハッピーフライト (プレビュー)