「mc Sister」の渡さん

かつて私の愛読誌だった(今はなき)「mc Sister」に、70年代、渡さんがリレーエッセイを書いていたという情報を得ましたので、探し回ってその一部の4冊ばかりを、大人買いしてしまいました(汗)。
「つれづれなるままにかく語りき」という連載で、高田渡、及川恒平、吉田拓郎が交代でエッセイを書いています。1973年からしばらくの間続いていたようです。



若き日の渡さんのお写真が載ってるかも!とわくわくしましたが、とりあえず私が入手した4冊に関しては載ってた写真は1つだけ。



なんだかなぁ(笑)。
不穏な髭オヤジ。
「mc Sister」に載る顔じゃないわけですけどね。そのギャップがとてもよろしいです。
ビジュアルより何より書いてるエッセイの内容がとにかく媒体無視しまくりの過激なものなのに驚きました。
批判と愚痴と厭世とでものすごい様相。反骨精神むき出しです。
連載の初回から「ファッション誌を読むような女の子にはイヤ気がさす。他の、もっと活字の多いものを読んだほうがいい」とか「ファッションなんてものにばかり興味をもつと人間薄っぺらになる」とか、「もし子どもが女の子なら(注:当時、奥さんが臨月の身だった)服は全部家で作ってやりたいものです。店などに並んでいる安物の人間を作る服だけは着せたくありません」等々、完全に場(ここはファッション誌w)を無視した言動のオンパレードですよ。
名指しで音楽評論家を罵倒したり、「最近の世の中は」という怒りを書き連ねたり、永山則夫の詩を引用したり、あれはなっとらんこれもなとらん!といった調子。
え〜?渡さんってこんな過激だったの?トシとってからは飄々としてるみたいな感じだけど。丸くなったのだろうか。
まぁ、無理も無い。この頃、渡さんはまだ24歳。青いことこの上なしです。
青くて硬くて齧ると渋い、育ちきらない林檎のようです。
でも、そんなところがなんとも言えず色っぽかったりもするんですよ。いいなぁ〜(惚)。
24歳の血気盛んな男の子が、しかも団塊の世代であれば、こうした反骨を持っていたって不思議じゃなかった時代なのでしょうが、渡さんの場合はそれだけに終わらない屈折が伺えるのがまた、なんか放っておけないところなのです。
基本的にこの人はやはりどこまでも詩人であり、「ガラス細工のような人(と、よく言われる、と書いてましたw)」なのだな。
渡さんにはどこか徹底的に寂しい部分、諦めている部分ってのがあって、それはたぶん物心つかないうちにお母さんと死に別れてしまって、その成長過程に母性が完全に欠落していたせいもあるのだろうと思うのだけれど、その拭いきれない不全感というものが、ある意味「根幹」であるのを感じます。
なにはともあれ、こういうエッセイを載せていた「mc Sister」の懐の広さが素晴らしいです。さすが、私の愛した雑誌だ(と、ちょっと自慢)。


この雑誌が出た頃、私は小学校に入ったばかりです。
私が子どもの頃に感じていた「若者」というイメージが、ここには凝縮されています。
漠然と、「ああ、かっこいいな。私も大きくなったらああなりたいな」と思っていたイメージです。
実際、私が「若者」になる頃には時代も変わっていて、こういったイメージとはまるで違う80年代を生きることになるのだけれどね。
それでも幼心に憧れた「若者」の像(私の時代や、今現在の若者よりも、かなり大人っぽい青年たちです)は、今でも私の中では永遠に憧れとして存在していて、そういうのがフォークとか全共闘とかその辺のムーブメントを好きだという気持ちに通じるのかもしれません。
おかげで私はヨソジを越してもまだ自分のことを「若者」にさえなりきれない「子ども」のように思えてならないことがよくあります(いい意味ではないですよ)。


73年当時の「mc Sister」の中身、ちょっと紹介しておきます。
今の若い子が読んでいる広告(とさえ言いたくない。あれはチラシのレベルだね)だけしかない薄っぺらで知性の欠片も感じられない拝金主義の糞雑誌とは大いに違っていて、知的です。
それでも当時の渡さんは「ファッション雑誌なんて読んでっとバカになる」くらいのこと言ってるんだからねぇ。ハードル高ぇw



時代の最先端はアイビー・ルック。
ブレザーにネクタイ、リーガルシューズ。
トレーナー、ダッフルコート、スタジアムジャンパーてな感じ。



ステキなニットがたくさん!
手編みもブームでしたねぇ。



お花の育て方などの実用ページ。
お料理やインテリアなど、おうちの事に関する情報もいろいろ載ってます。
なんでも買えばいいという拝金主義ではなく、手作りの良さもきちんとあった時代です。



ディスカバー・ジャパン。
日本各地の旅情報も必ず載ってます。
民芸風のイメージで、地方の魅力を伝えるのがブームだったもよう。
地方の小京都とか、人気でした。
そういや最近の若い人は旅をしなくなったんだそうですね。



フォークも若者の興味の的です。
ケメさんのギター講座が連載されています。
フォークシンガーの対談やエッセイが必ず載ってる。



フォーク喫茶探訪。
小室等(今と大して変わってない)がおりますね。


ところで。
渡さんは「mc Sister」にたびたび寄稿してますが、1974年12月号(61号)ってのには特別にヨーロッパ旅行の記事が載ってるようなんですよ。
これ、探しているのだけど見つかりません。
読みたいよぅぅ。
ああ〜神保町に行きたい!古書店で古雑誌を漁りたい!
どこかの古書の山の中に眠っている70年代の渡さんに逢いたいです。