夏の階段


Shall I compare thee to a summer's day?
Thou art more lovely and more temperate:

きみを夏の一日にたとえてみよう
きみはもっとかわいらしく、もっとやさしい

シェイクスピアソネット18番より)


「わたしが選んだ いわさきちひろ展」を観に、宇都宮美術館へ行ってきました。



開催前に、好きな絵に文章を寄せてください、という公募企画があった参加型の展覧会。
私の書いた文章も、大好きな作品とともに展示されていました♪
「こげ茶色の帽子の少女」という作品に寄せて書いた文章です。

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娘が小さかった頃、ちひろさんの描く女の子にとてもよく似ていました。
中でも「こげ茶色の帽子の少女」は、まとっている雰囲気までそっくりで、見るたびに嬉しくなります。
お気に入りの帽子をかぶった時の、喜びがにじみ出たお澄まし顔、ちょっと緊張しているような可愛らしい足のそろえ方…小さな女の子のときめく気持ちが優しく描かれていて、胸がふわっと温まります。
いつまでも大好きな一枚です。

今回、作品以外にもちひろさんの愛用の日用品や居間(仕事場)の復元なども展示されていて、思いがけず胸に迫るものがありました。
作品を通して感じるものとは別の、お母さんとしてだったり奥さんとしてだったり一人の女性としてのちひろさんの存在を感じることができたのが貴重でした。
モノを作り続ける女性としてのあり方のようなものも。
いろんな点で、大先輩として教わることがとても多かったです。居間のあり方、なんてのまで含めてかなり触発されました。


あれだけの作品を残し、今でも多くの人に多大な影響を与え続けるちひろさんは、たった50数年で逝ってしまった。
それを思うと、自分がいかに人生を浪費しているかに愕然とします。
人生もまた夏の一日の如く、です。
短くあっという間に過ぎ去るものでもあり、永遠の輝きをもつものでもある。
いずれにせよ、夏のさなかに立つ今この時こそが、まさに人生の本番であることは揺るぎがない。
どこかに残った、まだハタチの小娘であるかのような錯覚に気づき、ハッ!とします。
大いに反省し、少し前向きに考え直す機会を得たように思います。
「頑張ろう」という思いを新たに抱えることができました。有難い事です。