「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」

トムの新作だということで楽しみにしてた「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」を見に行ってきました。


ソ連のアフガン侵攻に介入し撤退させるキーパーソンとなった実在のアメリカ合衆国下院議員の話。
見終えてまず感じたのが、「もしかしてこの作品は壮大な皮肉なのだろうか?」ってこと。
チャーリー・ウィルソンは1980年代のアフガニスタンの現状を見過ごすことができず、助けを乞われやむにやまれぬ思いを抱き、冷戦下の反共的思想と人道的道義心とアメリカの善意を抱えてアフガン支援を実行したのですが、所詮は「力をもって力を制する」的な古い、そして実にアメリカンなやり方であったのかもしれません。
武力にはそれを超える武力を、と侵略者に対して戦いで臨めば、それはいつかまた別の戦いへと連鎖してゆく。
アメリカが軍事力を与えたアフガンの原理主義ゲリラは、やがてアルカイダとなり、9・11に象徴される後の世の歪みを引き起こすに至るわけです。
そんなことはこの時のチャーリーには知る由もない。
でも、誰かが何かを動かした時、最後まできっちりと見届けずに去ってしまえば、その動きはヘンな形で残るんですよね。
それはチャーリーだって薄々気づいていて不安に思っています(たぶんホントは気づいていなかったと思うけれど、映画では気づきがあったように匂わせている。便宜上)。
チャーリーの言葉を借りれば「ボールは弾み続ける」のです。


因果というにはあまりにも酷だろうと思う。
誰もチャーリーを責めることなどできない。彼は間違っていないし、誰かを救うことにも成功した。賞賛に値することをしたのです。
でも、因果というものは少なからずあって、それはチャーリーの参謀であるガスが繰り返し言ったように、「今にわかる」のです。
その時はわからない。
でも、物事は思わぬ波及を及ぼし、まるで予想もつかなかったところに着地したりする。
そこが皮肉だなぁ、と感じるのですよね。
この映画を作ったアメリカの真意が「もう理由はどうあれ武器は捨てようよ。そういうロジックで動くこと自体、違うだろ?全ての戦争にNOを言おう」というところにあるのだったら、この映画は画期的なのだろうと思いますが…たぶん(絶対)そういうことじゃないっすしね。
それでもこの映画はチャーリーを英雄視して自国の善意を手放しで讃えているのではないところに若干の進歩(?)があると思います。
アメリカもそういうとこ成長せざるを得ない現状があるのでしょう。


面白いかつまらないかといったら、面白くもつまらなくもないとしか言えない作品でした。
正直、期待はずれの感はあった。(期待とは別の部分で面白くもあったけれど)
てか、トムはもう人が死んだりする映画に出るのはやめませんか?やめてくれ頼むから。ヤだよ、もう。
アメリカの良心」みたいなのもウンザリ。そんなのも続けばどんどん精神的マッチョになって行くようだよ。
でもって次またダ・ビンチ・コードの続編でしょう?
いいかげんラブコメやってくだされよ。自分の魅力をわかって頂戴!
この映画だってね、予告編やTVスポットで見るイメージとはまったく違いますからね。
ガンガン人が死ぬよ。悲しい子どもがたくさん出てくるよ。思いっきりドーーンと落ち込んだ気分になるよ。
軽やかなコメディタッチで宣伝打ってるのは詐欺か?ってなトーンの差。
酒と女に目がないお気楽議員はどこへ?「アメリカン・パイ」はどこへ?チャーリーズ・エンジェルは…いた。これは確かにいたwおっぱい軍団。でも、チャーリーはべつに彼女たちに興味もなさげ。予想外に色気ナッシング。
トム・ハンクスが女好きの役ってのはどだい無理がある。
てか、エロ男の演技さえできないものなのか?というのが驚異だが。やっぱり精神的にマッチョ化してきてるのかも(?!)。


とはいえ、この映画に色気がないというわけではありません。
フィリップ・シーモア・ホフマンがいるのだ!!!!!(←思わず力が入った)
まったくの想定外だったのだけれど、シーモアは最高でした。
自分がシーモアに魅力を感じることなんて間違ってもないと思っていたのに。びっくり。
ま、「間違ってもない」なんてのばっかですけどね、私の場合。で、やっぱり間違ってたりすんだけど(汗)。←演技派に弱いだけ?騙されやすい女?
シーモアはチャーリーの参謀的存在であるCIAの問題児、頭の切れるスパイ大作戦な男・ガスを演じているのですが、とにかくカッコいいんデスヨ!!!
メタボだけれど。オヤジだけれど。トムより10歳以上も年下とは思えないけれど。アタシより年下とも思えないのだけれど(涙)!
あの指輪と金時計!哀愁漂う背広の着こなし、キレのいい会話、洞察力、行動力、遠慮のないジョーク。
なんかもうね、やたらとイロっぽいんだシーモア
べつにイロっぽい役でもなんでもないのだけど。なんだろうクラクラするぞ。
たとえばさ、美女が横を通り過ぎるときの視線の泳がせ方ね。エロいんだ!
女好き設定のチャーリーはそれがなってないんだよ。トムが美女を見る時の視線って「あーあー、あんなに胸元開けちゃって」みたいな、なんというか、頭でモノを考えてる人の視線なんですよ。
でもシーモアは違う。思考が停止して下半身でモノを考えてる視線になる。上手いですよー。すごい演技派だね(素だったりしてw)。
今回、トムは完全にシーモアに食われたね。完敗だ。
だからやっぱりこの次はラブコメに出ましょうよ。それなら誰にも負けないぞ!
てなわけで。
トム目当てで行って、シーモアにラヴな気持ちで帰ってきた今日の日でした。


シーモア、モア!