Loved Hilary !

大好きなヒラリーの新譜です。


シベリウス&シェーンベルク:ヴァイオリン協奏曲


うはぁ、新譜だわ〜♪と喜ぶもつかの間、「うわ…シェーンベルク(汗)」と、伸ばした手に一瞬、ためらいが走りましたですよ。
シェーンベルクって、どう聴いていいのかわからないんですもん。ぶっちゃけ超苦手。
なんでヒラリーはこんな選曲すんの?わざわざ疲れるようなアルバム買うのはイヤだなぁと思いながらも、それでもヒラリーの新譜を買わないでいるなんてことはアタシにはできないし、毎度恒例となっているご本人による作品解説ライナーノーツも楽しみだし(これがあるからヒラリーのアルバムは日本版を買う価値がある!)ということで、微妙な気持ちを抱えつつもめげずに購入しました。


シェーンベルクはやっぱりとても「難解」で、わけがわかりません。
が、それでもヒラリーの演奏にはなにか妙に底光りするような魅力があり、こんな曲(って言い方もヘンですが、要するにアタシの理解を超える曲)でも、ヘンに惹きつけられるものとなっております。
何度か聴いた後もちーっともわかんないんですけど、それでもまだ繰り返し聴きたいと思えるのだから、かなりスゴイ事です。
普通だったらこんなにわかんない曲、聴くのイヤんなるよ。それをそう思わせないヒラリーってスゴイ、ってこと。


シベリウスの方はただただひたすら毅然としていて美しいです。
硬質で、澄んでいて、なおかつ力強いイメージ。
あー、やっぱりヒラリーの演奏はとても素晴らしい!なんだろう、この表現力は。


ヒラリーはいつだってまるで学生のような向学心と意欲を持って真っ直ぐに音楽に向かっていて、その姿勢は本当に気持ちが良いものです。
その若々しさと同時に、年を重ねるごとに、ますます磨きがかかって音に凄味が帯びてきてる気がします。
なんといっても磐石です。この安定感はなかなかないですよ。
稀有な技術の高さの上に、さらに表現の豊かさというか女優魂のようなものが加わっている。
もう、圧倒されちゃいます。
いつもそれほど有名どころではないオケ(今回はスウェーデン放送交響楽団)との録音なんですが、オケも素晴らしいのですよ。溶け合ってるの。
なんか、こういったちょっとハズシた感じというか、ど真ん中っぽくないところが、彼女の絶妙にオシャレなところです。
そう、ヒラリーは(ダサい人たちがわりかし多い)クラシック界において、その存在のオシャレ度が抜きん出てるんですよ!
自分の思いや音楽への感受性を明確に言語化できる能力も、とても知性的で魅力あります。
あの難解なシェーンベルクに対峙する時の彼女の好奇心と興奮を読んでいると、なんだかシェーンベルクの音楽に(さえ!)も興味が持てそうになりますからね。
何が彼女をそんなに夢中にさせたのか気になるし、彼女が見た風景の一部でもいいから私も見たい!と思えてくる。
ちょっと毛色の変わった曲に、誰よりもフレンドリーに誘導してくれて、なおかつ最高の技術で聴かせてくれるミューズなのだヒラリーは。