初ダスビ!

ショスタコ専門のアマオケ、オーケストラ・ダスビダーニャのコンサートを初めて聴きに行きました。
去年はなんだかんだでチケ買ってあったのに行けず。今年も行く直前までどうしようかなぁーと(寒いし…とか、遠いし…とかいう理由でね)迷っていたんですが、ショスタコ・ファンとしてこのオケを聴いたことが無いってのはちょっとマズイんじゃないかとも思ったし、やはりその実態が気になったので、行くことにしたのでした。


行って大正解!!!もう、びっっくりしましたよ。
あまりにも素晴らしい演奏に、呆然でした。
こんなに凄いオケだったんですか?!早く言ってよー。
これでアマチュアだなんて嘘でしょ?、て感じ。スゴかった!

演目
  ノヴォロシスクの鐘
  交響曲第9番 変ホ長調 作品70
  交響曲第11番 ト短調 「1905年」作品103
指揮者 長田雅人(常任指揮者)



池袋の東京芸術劇場はとにかくデカイ。
はじめて体験するホールでしたが、音の響きがとてもいいような気がしました。
その大きなホールにほぼ満員の聴衆。
この人たちみんなショスタコファンなんだと思うと、なにやら暖かい気持ちに。


「ノヴォロシスクの鐘」は初めて聴く曲でした。
2分ほどの小曲なんですが、これが素晴らしくて最初からガシッと心を掴まれました。
ハンドベルの絶妙な響きの余韻。豊かな波のような弦のハーモニー。うっとりでした。


交響曲第9番」は、キッチュなイメージのある曲ですが、これもまた絶妙なリズム感とノリでぐいぐい引っ張ってくれます。
メリハリが効いた生き生きとした演奏でした!
パンチがあって、音の振幅もダイナミック。聴いててすごく楽しくなっちゃって、自然に微笑みが浮かんでしまう。
スターリンが失望して激怒した「駄作」とは到底思えない、素晴らしい曲。9番をこんなに「楽しい」と思ったのは初めてですよ。
特筆すべきはピッコロですね。
第1楽章でさぞかしプレッシャー感じるだろうなぁ〜っていう長いソロパートがあるのですが、 それをなんとも可愛らしいお嬢さんが堂々と一人で渡りあってリードして行くんですからね。もーードキドキしちゃいましたが、これが実にお見事。
2楽章ではすごいロングトーンもあるんですが、それもきれいにキメておりました。ブラボー!
ピッコロ嬢、素晴らしかったです。


休憩を挟んで、「交響曲11番」。これは大作です。
こちらも素晴らしい演奏でした。
オケ全体がうねるような、地の底から響いてくる地鳴りのような1楽章。音の揃ったバイオリン。響きのいい低弦。
2楽章の爆発は、粗野に陥る一歩手前という感じの絶妙な音の洪水!押し寄せる熱情。さーっと鳥肌が立ちました。
3楽章のビオラはゴリゴリとソ連の音がした。かっこいい。
最終章。さまざまな打楽器のタイミングの見事さ。ためらいの無い思い切った打楽器陣のイケイケぶりがとにかく気持ちがいい!素晴らしいー。
澄んだイングリッシュホルンの響きには、涙が出そうでした。
ロシアの大地に広がる果てしない曇天が、荒涼たる灰色の空が、ぶわーーっと眼前に現れるような思いがしましたからね。
最後の爆発の後の「時の停止」には、息もできないほど。こんな余韻のあり方をはじめて体感しました。
聴衆の呼吸も見事に一体化してましたねぇ〜。先走りブラボーなんて、ありえない。きっと、聴衆もこだわりのある人たちばかりだからですね。
なんかねーとにかく手放しで「すごい!」って思っちゃうような演奏でした。
バスクラの音色がちょっと唐突だったのと、最後の鐘の音がやたらデカかったのにちょっとひっかかりましたが、アラなんて見当たらないくらい生き生きとした演奏のように思いました。


終了後、過去演奏会のパンフをあるだけ全部買って帰りました。
このオケ、パンフの文章がすごーく面白いのですよ。過去の分まで読みたかったのです。
ショスタコの音楽って、こうして「言葉」が多くてもいいんだ、という気がするんですよね。私がショスタコを好きなのも、そんなところもポイントの一つだと思います。
音楽は語るものではない、という意識は常にどこかにあるのだけれど、ショスさんの音楽は語ってもいいのだ、と語られるべきものがあるのだ、と思える音楽なんですよね。極めて文学的な音。
だから、私のような「音楽的でない」音楽コンプレックスのある人間にも親しめるし、言葉を抱えたまま聴いてもいいんだ、という安心感がどこかにある。
それは私の好きなアバンギャルド芸術にも通じる。
理屈のある造形、が、絵画の「無言性」(それはとても敷居が高いものなのです)を乗り越えて、こちらに近寄ってくれる、あの嬉しさに通じるんですよ。
って、まぁこれは私の勝手な思い込みですけどね。


オーケストラ・ダスビダーニャは素晴らしいオーケストラでした。
ファンになってしまいました(*^^*)。
また来年が待ち遠しいです。
あの演奏をしながら1年にたった一度の演奏会って…すごい、「瞬間の美」ですね。
一期一会。
人生の真髄まで教わるような思いがしましたよ!



劇場3階から見たトウキョウ。
今日はとてもいい天気。春はもうすぐそこ、ですね。