「恋する予感」

Awfully Big Adventure [VHS]

Awfully Big Adventure [VHS]

  • 発売日: 1998/09/01
  • メディア: VHS

これね、アラン・リックマンがすごくステキー!だという噂でしたので、どうしても観たかった映画なんですけど、近くのレンタルビデオ店にはなく、ディスカスにもなく(ココの品揃えはアタシの欲望を満たせない)、オークションではどれも妙に高値がついてて(アランのビデオはとにかくどれでもヤフオクではめちゃめちゃ高い!なんで?!って感じ。その中ではこれはいちばん安いものですが、それでも1500円以上はする)でも、しょうがない、オクで買うしか道はないかなーと思っていた矢先の先月某日、ちょっと足を伸ばした先のレンタルショップに、レンタル落ちのセルビデオとして売られているのを発見したのです!
しかも激安。なんと!!

100円!!!

超ラッキー!
ムキャーーと叫びつつ鷲掴みにしてレジにダッシュしましたさ。
ところが急に忙しくなってなかなか観る時間が取れないまま日々は過ぎ…昨夜やっと観ました。


これ、おちゃらけたヒューのドアップジャケ写やテキトーすぎる邦題やアランのファンサイトのキャプ画像などから勝手に判断してコメディかと思っていたんですけど、全然違いました。
人生の暗部も描いてるし、衝撃の結末はあるし、淫靡だし、ドラマ的な要素が深い作品でした。
どこか滑稽で可笑しくもあるのだけど。
ま、ワタシ的に言えば、これはアランのロリエロ映画、ですけどね。
そう言い切っちゃっても遠からずだと思う。(決してバカにして言ってるわけではないですよ!)


主人公は女優志望の16歳の少女、ステラ。
ステラは劇団の研究生で、その主宰者メレディスヒュー・グラント)に恋をしてるんですが、彼はゲイで、ステラの想いは通じません。
やがてステラは、客演でやってきた人気俳優オハラ(アラン・リックマン)と興味本位で男女の仲になるのですが、やがて…
という話。
て、こんな書き方じゃどんな話なんだかわからんですね。
要するに少女が女になってゆく話、みたいな感じですよ。
この映画、実は「恋」なんかよりも圧倒的に「性」の匂いが強いのです。テーマがそれです。
しかもゲイとロリータというダブルパンチ。風味濃厚。(ゲイ的な映像は出ませんけどね。そちらはほのかな匂いだけです)
決して一般的な意味でのラブストーリーではないのですが、性交渉の言い訳のように愛だの恋だの言わない清々しさがあって、むしろ好感を持ちました。
肉体的に関係を持つ中で愛とも恋とも名のつかない不思議なつながりというのも存在する。交し合った相手が、心に残らないわけがない。
交渉を持った人間同士ってのは何らかの形でつながってゆくんですね。人同士のつながりっていうのは、言葉ではくくれない。そういう細かな感情のひだのようなものが描けている作品だと思います。


16歳の少女ステラはストレートに性への好奇心を表すタイプで、そこがたまらなくエロチックです。
色が抜けるように白くて、柔らかそうで、赤い髪をした、小柄で、無垢な表情をした少女が、すごく年上の男の元に、自ら希望して抱かれにやってくるんですよ。「それ」を知りたいという好奇心でいっぱいになりながら!
なんかもう、夢のようなシチュエーションでしょう?w
それを食べちゃうのがアラン演じるオハラだからね。たまりませんよ。

「いただきっ!」ってな心の声が聞こえてくるようなシーン。
アラン、ヤラシイよーアラン。
ステラはあまりに子供っぽいから、ホントに犯罪スレスレに見えちゃってます。禁断臭い(実はさらに禁断だったりするんだが(爆))
しかもこのおっさん、上手いんだよ、ベッドシーンの演技が。
思い出しても息苦しいっすよ。夢に出てくるよ。うなされるよ。イカすよ(←文字どおり)。
ハンパない濃さだね。
抱いた次の日、おっさんがまた彼女に誘いの声をかけるってシーンがあるんですよ。夜道でね。
その時の「今夜、どう?」みたいなセリフだけでも激エロですからね。
顔見えないのに、腰砕けますからね。なんだこのヒト。ダダ漏れ


描かれている時代が第2次大戦後まもなくのリヴァプールで、これがまたとてもいい雰囲気なんですよ。
物資不足と戦争の後遺症がまだ残る時代で、ぽかんとした空虚の中にも、「前を向いて歩いていこう」みたいな空気も混じってて、ほんのりと灯りが見えるようなイメージで。
戦後のあの時代ならでは、の「生きる」=人と交わる、みたいな感覚もあるように思います。
この映画では、「性」は「生」なんですよ。
たぶんSEXが、今よりもずっとずっと重要で必要なものだったのだろうな、と。


ステラが母親に電話をかけるシーンがたびたび出てきて、それが彼女の心の拠り所というか、支えなのだと感じられるのですが、これがまた最後の種明かし(?)で、ずーんと胸に響きます。
この少女の埋められない心の「穴」が見える。そしてその穴の向こうに、これまた意外なものが隠れている…という浪花節みたいな展開が、なかなかドラマティックです。
どっちかっていうと暗い映画なんだろうし、衝撃の結末からくる後味の悪さがイヤだという意見も多数あるようですが、どこか滑稽で、愛らしく、胸に残る作品でした。
ハッピーエンド偏愛型の私が、この作品を「好きかも」と感じたのが我ながら不思議。
それと、この作品観た後に、ここんとこ全く書けなかった文章を書けるようになったのが嬉しかったです。
それだけ胸にクるものがあったってことですかね。それって(私にとっては)いい作品だという証拠です。
あ、ブログも久々に書く気になったしね!めでたしです(^^;;。マジでもうブログ書けないかも…と思ってたくらい、ここんとこ、ノれなかったんですよ。何があったわけでもないんですけど、気分の問題でね。


ロケがアイルランドのダブリンだったというのも気に入りました。(アイルランドへの興味は続行中ですよ!)
アラン演じるオハラがアイルランドの人間らしいのもイイです。
テーマ音楽もとことんケルティックな雰囲気で、つい意識を飛ばしながらぼんやりと聴き入ってしまいました。
どこかアイリッシュな匂いが濃い作品のような気がします。
それにしても、この邦題はヒド過ぎ。題名をつける人、映画をちゃんと観たんでしょうかね?
ヒュー・グラント」って邦題のあおりも違うしな。ヒュー、主役じゃないもん。ま、売ってナンボですからそこはしょうがないか。
注:現物ビデオのパッケージはこんなの↓