「ジャックと離婚」は最高!

というわけで。
先日書きましたように、「ディボーシング・ジャック」のデビシュ演じるダン・スターキーに惚れました。
好きになったら活字プリーズ!な私は、さっそく原作を読みましたさ。


これはもう映画見終わった瞬間から「原作、絶対読まなくちゃ!」って思ったんですよ。
直感、だね。こりゃ面白いに決まってる、っていう。
なにこの題名?と、苦笑しながらも、ふと訳者を見たら金原先生ではないですか。なんか嬉しい。瞬時に、この題名でいいのだろうな、という気になった。
金原先生の台詞回しはやっぱり上手い!さくさく読める。


なにはともあれ休みということもあって寝食忘れて夢中で一気読み。
読後、愕然としましたよ。
思ったとおりめっちゃくちゃ面白い!!
いや、思った以上にスゴイ!
でもこれ、作者・コリン・ベイトマンの処女作だっていうんだよ。*1
言葉がないね。
新人でこんなの書くなんて、この人それまで何やってたんだ?
アタシの寝言のような駄文はどうしたらいいんでしょうか(涙)。浮上不可能だ。
本当の小説ってのはこういうものだ。
奥深くて知的で可笑しいエンタティンメント。
日本じゃあまりお目にかからない。って、日本人の作家はごく限られた人しか好きでないからろくに読んじゃいないんだけど、こういうタイプの小説は翻訳モノでしか読めないような気がします。作品のスケールってか、懐のデカさが全然違う。
なんでこんなに「個人」を描きながら「社会」を描けるんだろう?サスペンスであるのにコメディで、しかもとても愛らしい(これは最大のポイント。映画よりもさらに原作は愛らしい)
ここで私がくどくどヘタな感想を書くのも無意味なのでやめときますが、とにかく、デキの良さに圧倒されました。
今まで興味も関心もなく、ジョイスの小説の陰鬱なイメージしかなかったアイルランドが、すごく魅力的に思えたし。


映画は原作を忠実に再現してます。
って、映画の脚本書いたのが作家本人だからお手のものだね。トーンもノリも同じです。
原作のスターキーはデビシュより小柄設定ですけどね(そんなのいつものことだ。あちらさんが常にデカ過ぎてるだけで)。
あ、でも、どうしても原作の方が映画よりは詳しいので、もっと事情は複雑です。
小さい驚きがいくつもある。映画では端折られてたんだけど、映画の中において非情に見える行為も、原作での説明があると若干「しかたないのかな」と思えたり、ってのがあったります。救いがやや多い。
で、物語もまた多い。また別のドラマが感じられます。


ダン・スターキーのシリーズはこの後、4作品(以上?)あるようです。
でも翻訳は出て無さそうなんですよね。
この本のあとがきで、金原先生が次作の「Of wee sweetie mice and men」ってのが創元社から近日刊予定ですよーって言ってんですけど、5年後の今でも刊行リストに載ってないってことは、どうやらこの企画立ち消えになったようですね。
こんなに面白いのに、やっぱアイリッシュの新人作家じゃ日本のマーケットには向かないのかな?
第2弾以降も読みたいようぅ!創元社さん、プリーズ、スターキー!
そういや、映画だって面白かったし評価も高かったのに続編が出なかったのはなぜなんでしょう?
ま、そんなところにもそこはかとなく当時のデビシュの仕事運の弱さを思ったりするわけですが(←妄想)。

*1:処女作にしてイギリスとアイルランドで絶賛の嵐。ベティ・トラスク賞(英国作家協会新人賞)を受賞という輝かしい結果を残してる作品。