ギャングスター・ナンバー1

まずい…まずいよー。崖っぷちだよ。
あと1歩で穴に落ちそう。深そうな穴なんだこれがまた。
ということで、デビシュー祭り第3弾はこれ。

ギャングスター・ナンバー1 [DVD]

ギャングスター・ナンバー1 [DVD]

  • 発売日: 2005/07/06
  • メディア: DVD

デビシュー演じる”フレディ・メイズ”があまりにもあまりにもカッコよくて、もうクラクラ。
ヤられましたー。

暗黒街の王者として登場するフレディ・メイズ。
その足元から舐めるようにカメラが這う。
最高級のイタリアの手縫いの靴、絹の靴下、極上のビスポーク・スーツ、ルビーのタイピン、純金の時計…



ああ…ステキすぎる!どうしよう!
最初の登場シーンからしてもうカウンターパンチ食らっちゃった感じ。あとはもうぐいぐい画面に引き込まれちゃう。
果てしなくスーツ(ってかネクタイ)フェチな私にとって、仕立ての良い高級スーツを眺めているだけで頭がボーッとする。
それだけでも官能の塊なのに、それを着ているのがデビシューだからね。
って、いや、デビシューをそこまで好きなわけじゃなかったはずなんだけど、コレ見たら一気に燃料計がFullになっちゃった。スーツ・マジック。
つくづく「ああ自分も男に生まれたかった」と思う。
私が男の人だったら、きっと毎日スーツにネクタイを身に付けるのに、と。
吊るしで売ってるスーツを着たフツーのリーマンスタイルだって大好きなんだけど、こういうスタイリッシュなスーツの格好良さってのはまた格別だと思いますねぇ。
匂い立つようだ。カッコイイ。*1


ついでにコートも極上キャメル。
震えるほどステキだ!



ポール・ベタニーがネクタイを締めカフスを付け…と身支度をするシーンなんかも思いっきり見入っちゃいました。
見てて飽きない。
ベタニーなんて大っ嫌いなのに(爆)、うっとりしてしまう。
これがベタニーじゃなくてシューリスだったら垂涎モノの永久保存版だったなぁ。
って、なんかもう、自分のfetishismを直撃されてしまったのでスーツネタで語りつくしそう(汗)*2。映画の正当な評価ができそうにもない状況で言うのもなんですが、これ、かなり面白い作品でしたよ!


この映画の核は、単純にいうと「男惚れ」だと思うのですが(複雑にいうとそれだけじゃなくてとても深いのですけど、とりあえずわかりやすく)このコンセプトがね、イイんですよぅ。よーく描けてます。
ホントはラブストーリー(永遠の片想いの)でしょ?みたいな色気があります。
老年のギャングを演じたマルコム・マクダウェルがとにかく巧い!
ベタニーはとことん嫌な男。あの顔がどうしてもダメな私には修行でしたが、物語的にはまったくもってOK。というか、大成功の配役でしたね。なんだかんだで、上手いんだよね。
ベタニー演じるギャングはシューリス演じるフレディ・メイズにとことん憧れている。
それは「自分がメイズになりたい」と思うほどの強い欲望なんです。
彼の身につけているもの、その地位、権力、カネ、雰囲気、すべてを手に入れたいと思ってる。タバコの吸い方もマネて、同じ装飾品をつけたがり…たぶん(自分では意識していないけれども)同性愛的にも愛している。誰にも渡したくないほどに。だからメイズの恋人・カレンを激しく憎悪したりもする。
でも、誰にも渡したくないのと同時に、彼は自分がメイズそのものになりたいわけです。今いるメイズはいらない。そこに倒錯がある。
ギャングはある日ついにメイズを罠にはめて失脚させて、自らがTOPの座に君臨するのですが、そこには自分があれほど恋焦がれたメイズとは違う自分がいるわけです。
ギャングはメイズになれない。
上等のスーツを着て、金儲けをして…それでもメイズを超えられない。
焦り、苛立つギャング。
やがて、30年の刑期を終えてメイズが帰ってくるという噂が聞こえてくる。
今度こそメイズを超えて「本当のナンバーワン」になるのだ、と、喜びに震えながら手ぐすね引いて待つギャング。
ところが、出所したメイズは昔とは全く違う人間になっていたのです。
目の前に現れたメイズは、黒社会を嫌悪し、カレンと結婚し、文学の学位をとり*3、穏やかな日常を欲するごく普通の地味な老いた男だった。
ギャングは、自分の知らない、理解できない世界に行ってしまったメイズを必死で挑発してみるのだけど、メイズは動じない。そこにまた衝撃を受ける。
最後、ギャングは気が狂う。
超えたかった男の足元にも及ばず、からっぽの自分を抱えて、身動きができなくなる。

まぁ、ざっと言ってそういう話。
なんだか、ありがちな話かもしれない。
でも、役者の演技が上手いせいか、魅せられます。せつなさが沁みる。
ギャングが”ギャング”としか呼ばれていない(意図的に名無し?)なのも象徴的です。


シューリスは最初から最後までとことんステキです。
金太郎飴みたいにどこを切ってもカッコイイ。どうしちゃったんだ?と思うくらい(笑)
たぶん、役がめちゃめちゃカッコいいからですね。だって1人の男を狂わせるほどカッコイイ存在、という役なんだもんね。それなりに説得力ないと(^^;;。
中でも私は襲われるシーンが一番ステキだと思いました。せつなくて。
メッタメタにやられた瀕死の状態のメイズが、切り裂かれて倒れているカレンに必死で手を伸ばすところね。
高級スーツが血みどろになって、長い体が地面をズルズルっと這ってゆく。
暗黒街の王子がミジメな姿で路上に転がっているのに、それがとんでもなくカッコイイの!この瞬間、彼が1人の一途に恋する男になってるから。
たぶんこれで死んでたらそうは思わないのだろうけど、恋人ともども助かって後日談に通じるので、抵抗なくうっとりできるシーンとなってます。
シューリスは佇まいが上品なんで、どうしたって極道に見えないし、迫力不足の感もあるのだけど、そこが「いかにも」のヤクザじゃない何か「憧れてやまぬもの」を抱えているように見えて、ギャングが惹かれるのが理解できるってもんです。


ああ、それともう一つ。この映画は残虐な殺しのシーンが多々ありますが、死体をダイレクトに写さず、殺戮者のみを写す、という手法をとっているので、想像力をいたずらに膨らませることをしなければ、かなりスマートな映像になってます。
とりあえず一番怖いのはベタニーそのもの、っていうことでOK。←これはマジで怖い。
ただ、斧だのノミだの電流流す道具だのがチロチロ見えるので、深く考えたらアウト(笑)。


こちらは日本版の予告編。極上のスーツ着たシューリス。
音楽もステキだよー。


Gangster number one JPN Trailer

*1:厳密にいうと私はネクタイフェチなので、スーツにノーネクタイってなクールビズファッションは大嫌いです。ジャージよりも嫌い。逆に、スーツ着てなくてもカーディガンにネクタイ、みたいな公務員スタイルや学生服にネクタイ、などはとても好きです。言うまでもないけどボウタイやアスコットタイなどは論外です。

*2:この監督、絶対スーツフェチだ。賭けてもいい!フェチならではの視線がビシビシ伝わる。

*3:この男は文学好きだという設定なんですかね?こういうちょっとしたところが激しくツボだったりします。シューリス自身も詩人で小説家の一面があって、本出してるんだよね。なんかもう、ある意味、絵に描いたようだな。そのうち買って読みそうな自分が怖いです。