「アメリカングラフィティ」その後。

私の「好きな映画ベストテン」に必ず入る不朽の名作、「アメリカングラフィティ」。
この映画の続編があるのは知っていましたが(なぜならサントラだけは続編のものも持っているから)、今まで見たことがありませんでした。ソフトが手に入らなかった。
でも、DVD時代の到来とともに、簡単にこれも見ることができるようになっていたのですねぇ。
…ということで、やっと見ました。「アメグラ2」。

アメリカン・グラフィティ2 [DVD]

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  • チャールズ・マーティン・スミス
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アメグラ本編は1962年の夏の一夜が舞台です。
そして「2」は1964年、1965年、1966年、1967年のそれぞれの年の大晦日が舞台になっています。
それぞれの年に象徴されるアメリカの社会の様子を描きながら、主人公を変えて描いている。
以下あらすじ。面倒だったら読み飛ばして。


64年の大晦日
主人公はジョン・ミルナー(ポール・ル・マット)。
カーレースの大会に出場するジョン。高校時代の友人たちが応援にやってくる。
皆が揃った、最後の日。カリフォルニアの空はどこまでも抜けるように青い。
ジョンは見事、優勝。気に入ってた女の子ともデートの約束を取り付ける。
幸せな気分で「蛍の光」を口ずさみながら、帰路に着くジョン。夕闇の中、フォードのデュースクーペが道の向こうに消えてゆく…。


65年の大晦日
主人公はベトナム戦争に従軍しているテリー(チャールズ・マーティン・スミス)。
トーンが一気に変わる。戦場の過酷な様子が描き出される。テリーは銃撃の中泥まみれになりながらも、元気いっぱいにしっかりと生きている。
ファラオ団のジョーは同じ部隊。けれど彼はテリーの目の前で戦死してしまう。
テリーはこの戦場から逃げることを決意する。同僚の命を救い、嫌な上官にひと泡吹かせ、やるべきことをやってテリーは逃亡。
心晴れ晴れと「蛍の光」を歌いながらジャングルの奥地に消えてゆく…


66年の大晦日
主人公はデビー(キャンディ・クラーク)。
ヒッピー、マリファナ、サイケな風俗にまみれた若者たちが寄り集まっている。
恋人は働かないし浮気性。デビーはトップレスバーで働いて貢いでいたけれど、やはり別れがやってくる。
傷心を抱えたデビーを慰めたのはツアーのミュージシャンたち。新しい出会いで自分の人生を取り戻してゆくデビー。
バスに乗って皆で「蛍の光」を合唱しながら新天地を目指してゆく。


67年の大晦日
主人公はローリー(シンディ・ウィリアムズ)とスティーブ(ロン・ハワード)夫妻。二人には4歳の双子の息子がいる。
夫婦喧嘩で家を飛び出したローリーは弟の寄宿舎に居候するが、大学は学生運動の真っ只中。弟に、自分の古い価値観を論破され、愕然とするローリー。
やがて迎えにきたスティーブと共に学生と警官の闘争に巻き込まれてしまう。警察の横暴に直面しながら、社会には夫婦喧嘩より深刻なことがあるのだ、ということを理解してゆく二人。
ティーブは護送車を奪い、学生たちを助けることに成功。追っ手から逃げ出した二人は、電気屋のTV画面から流れてくる「蛍の光」を聴きながら、仲直りのキスをする。


ま、長くなりましたがこういった感じの4つのストーリーが絡み合っているのです。
それぞれの年の大晦日を描き、「蛍の光」で締めくくる…という手法なんだけど、これが順番に出てこないからややこしい。
64年〜67年のエピソードが、ごっちゃごちゃに出てくる。切れ切れに。
その編集方法がすごくわかりにくいのだけど(ゆえに駄作になっちゃってるのだろうけど)、これ、その部分の工夫をもうちょっと凝らしたら、素晴らしい作品になったと思うんですよ。
だって、コンセプトはすごくイイと思うもん。泣けちゃう。
こういう映画が観たかったんだよなぁ〜と思う。(編集が良ければ、の話よ)


1962年のアメリカは、夢のようだった。
そのアメリカはもうどこにもない。アメリカは今や苦悩の中を生きている。
失われてゆくアメリカの青春が、まさに落書き(グラフィティ)のように書き散らされている。感無量になります。
私はどっちかっていうと、この、苦しんでいる時代のアメリカのエピソードの方が、平和なゴールデン・フィフティーズよりもより興味があります。
ベトナム戦争に対する反戦活動や、ヒッピーなどが好きなので。
なので、ヒッピー編はもうちょっと違うアプローチが良かったなぁーと思います。(あそこが一番手抜きっぽかった)


この作品、アメグラに出ていたヒトはカート(リチャード・ドレイファス)を抜かしてみんな出演しています。
(チョイ役のハリソン・フォードまで、またもやチョイ役で出ている!なんとあの走り屋のアンちゃんは警察官になっておりますw)
リチャードが出てないのはたぶん、「出たくない」と本人が言ったからでしょうw意固地だな。
あ!ってより、1979年(この映画の撮影年)ってことだと、リチャードは驚異の役作り作品「コンペティション」を撮ってたので暇がなかったのかもしれない。アカデミー主演男優賞を史上最年少で獲った後の、鳴り物入りの作品だったから賭けてたんですよねぇ。
とはいえ、アメグラの中で一番好きだったのはホントはスティーブ(ロン・ハワード)でした。
カート(リチャード・ドレイファス)が好きなのは自分に似ているからだけど、スティーブは男の子として好きで…それは今でも変わらない。
「2」を見てますますそう思いましたよ。
閑話休題



こちら↑は昔の友人たちが彼のレースを観にやってくるシーン。
64年の大晦日、です。
ローリーとスティーブは結婚してる。ローリーは妊婦さんだ。「双子かもしれないんだ」と話している。
テリーとデビーはまだ恋人同士のままで微笑ましい。テリーは「これから戦地へ行く」と言っている。
「ベトコンをやっつけるぞ!」と強がるテリーに、ジョンは真面目な顔で言う「そんなのはいいんだ。生きて帰って来い。」と。
ネタバレ…ってか、アメグラを観たヒトはわかっていると思うけど、(以下反転)
64年の大晦日、ジョンは帰り道に酔払い運転の車と事故に遭い死んでしまう。
そのシーンの映像は、とても良かった。
レース大会が終わった帰り道、薄暗がりの道をポツンと一台走ってゆくジョンの車。
遠くからトラックらしいヘッドライトがぼんやりと近寄ってくる。起伏のある道の谷間で、この2台はであったはず…が、いつになってもすれ違ったはずの2台が道の上に現れない。衝突した、ということを暗示するだけで、そのシーンは映らないのですよ。
ただ、見えないその場所で何かがあったことを示して終わる。

「2」でも、アメグラと同じように、最後に登場人物たちの「その後」がテロップで出ます。(再び以下反転)
テリーは行方不明。デビーはカントリー歌手になる。ローリーは社会問題に目覚めて消費者団体で活動する(スティーブは保険屋のまま)。
この映画は、登場人物の人生が映画のエンドマークとともに終わらないことを示してくれるのです。
私たちの想像力が、彼らの人生を無意識で膨らますことができるのは、この短いテロップがあるおかげなんですよね。
駄作なんだけど、忘れられないイイ映画です。
もう一度見たい。
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