「花と龍」

花と龍 [DVD]

花と龍 [DVD]

  • 発売日: 2004/12/23
  • メディア: DVD

1973年の松竹映画。3時間の大作。
濃いですー。こってりですー。
「明治・大正・昭和にわたる若松港を舞台に、一介の沖仲士から身を起こし、九州一帯を支配する大親分にのし上がった男の人生を描く実録モノ」です。
主演、渡哲也、香山美子。二代目坊ンに竹脇無我
スゲー格好いい敵方に田宮二郎ファムファタル的に倍賞美津子などなど。
この映画、実はへーちゃん(石坂浩二)目当てで、ずっと前から目ぇ付けてたんです。
実際のところヘーちゃんの出番は二役にも関わらず唖然とするくらい少なくて、拍子抜けでした。
とんでもないちょい役じゃないのー。
まぁいいエピソードなんですけどね。
後にどうつながるのか期待を持たせる関係を匂わせているくせに、結局ろくにつながらずに終わる、っていう物足りなさ満載です。
親世代の時のしょぼしょぼしたビジュアルは偉仔かと思いました。そっくり。
しかし渡哲也ってのは変わらない人だね。今と全く同じ雰囲気。
太地喜和子は明らかに脱ぎ要員で、なんだかとても可哀相な気がしました(役も、可哀相な役なんだけど)。


この原作、めちゃくちゃビックリしたんですけど、火野葦平の自伝小説なんですね!
坊ンの名前「玉井勝則」って、作者自身の本名だしー。うわーなんか感動。
そういう人だったんか、火野葦平って。全然知らんかった。
従軍作家ってイメージしかなかったけど、任侠の世界に生まれていたんですね。
たぶん、映画はずいぶん原作と違うんだろうな…という気はするけど。
なんというか、エロとバイオレンスで客呼ぼう、ってのが見え見えだったりするんで。
原作も読んでみたいけど、そんな時間、今んトコちょっととれないなぁ。


明治・大正・昭和初期の最下層の港湾労働者の世界ってのは、凄まじいです。
喧嘩ったって、どかどか人死にが出るんだもんね。
抗争に博打に人身売買に労働争議…ドンパチのてんこ盛りだ。
そういう環境に育っても、息子(=火野葦平)は早稲田の文科出て小説家目指してたりするんですよね。
でもってお決まりのように左翼思想にかぶれる。遊女に関わってすったもんだしたりもする。
この時代の小説ってこういうパターン多いね。
「人生劇場」もそうだったし、時代は下がるけど「青春の門」なんかも。(この2作は高校生の頃めっちゃハマった)
親は労働者階級で、息子は早稲田の学生だ。
文学部で小説なんか書いたりしてて、遊郭に入り浸りで、あげく中退する。
「早稲田まで行っといてグータラしてんじゃねぇよ!ウゼぇ。」とか読みながら文句言いつつ、やっぱこういう話の「学生さん」は早稲田じゃなきゃダメなような気がする。
早稲田ばかりが大学なのかよ、ってカチンとキたりするんだけど、きっとそうなのかもしれない。「物語」の中では。