総括はお済みですか?


全共闘関連本。
を読んだつもりが、思いがけず世代論。
団塊の世代の姿が浮き彫りになってます。
この新書は、新書の役割とするところの部分(テーマをわかりやすく、総体的に解説するという点)で、とても優秀です。
団塊の世代の若者たちが、どういった流れで学生運動に関わり、どういった流れで社会に出て、どういった大人になったのか、というのが、とてもわかりやすく掴める。
わかりやすいというのはつまりひとからげの「世代論」に過ぎないということですが…それさえも私などは知らないことが多かったので、勉強になりました。
まずは木を見る前に森を見ないと。
全共闘世代を知らないヒトがその全体像を初めて知るにはイイ本だと思います。


個人的な感覚としては、団塊の世代の「革命」のその後を考えると、あの「革命」に意味などなかったといっても過言ではなく、学生運動もあの年代独特の「祭り」の一つであったのだなぁという印象に落ち着きます。(そこが60年代安保世代の持つ悲愴感とは若干異なるところかな?)
昨日までゲバ棒をもって「闘争」していた人間が、卒業と同時に「もう若くないさ」と髪を切り、真新しいスーツに身を包んで会社人間になってゆくという姿は滑稽ですが、それが「価値観の変化」でさえなかったという印象は拭えません。
それを総括ナシでできるのが、この世代の人の特徴なのか?とも思えます。
(そういう時代だった、という一言で済ませてしまいそうな)
それは軍国主義から民主主義に、鬼畜米英からギブミー・チョコレートへ、否応なく変化させられた戦中派の若者が、自分の価値観を変えるのにトラウマになりそうな苦悩を負ったのとは比べ物にさえならない「変化なき変化」「予定調和」であり、そういう意味ではもしかして団塊のみなさんは、我ら新人類以上に社会に甘えた世代だったのかもしれないなぁなどと思いますね。


思うに、「私がもし全共闘世代であったら、どう行動していただろうか?」という自分への問いは、この本を読んでおのずとわかるような気もしました。
横並び意識や雰囲気だけのスローガンには、やはり決定的に馴染まない。
私はどうしたって80年代の人間ですから、群れることをダサいと思い、人と違ったことをすることに美意識を感じ、経済を信じ、未来を夢見る力を持っていた若者でしたから。
ただ、祭りの雰囲気は外側からおもいきり楽しんだかもしれません。
今、こうして当時の話を興味深く読んでいるように。
団塊の世代という存在は、それだけでも面白い「物語」です。