ショスタコーヴィチは遠く。

今日はずっと楽しみにしていたオーケストラ・ダスビダーニャのコンサートの日でした。
でも、私はそこには行かず、地元のイベントで、家族や近所の人たちと一緒に古いジャズの演奏を聴いていました。
うららかすぎる暖かい春の日に、坊やを抱っこして聴く「波路はるかに(Sail Along Silv'ry Moon)」は、しみじみといい曲でした。
内陸の田舎町で聴くハワイアンは、ここではないどこかへの憧れをいや増し、ささやかな夢を見る力を与えてくれるような気がします。


音楽というのは、曲や演奏の質ばかりで語られるのではなく、それを聴く人間の心にどれだけの印象を与えられるかという部分でも語られていいのではないかと思います。
そんなこと言ってると、場末の流しの演歌歌手の方が世界的オーケストラより素晴らしかったりすることもありうるんですけどね。
やっぱそれはダメか(笑)。あまりに文学的すぎますね。音楽はやはり音楽として語られなければ。
そういう意味では、私は一生、音楽を音楽として聴くことに憧れながらも、そうできないんじゃないかとも思いますね。
音楽ってなんだろう?と、ふと考え込んでしまったよ。
そこにあるもの?私が感じるもの?


ダスビのコンサートに行かなかった理由は数え上げればきりがありませんが、それは誰のせいでもなく、ただ私の気分の問題です。
コンサート前にいろいろなことが重なって、それらが楽しみにしていたコンサートを私の中で形而下のものに押し下げました。
煩わしいことばかりが頭のなかに渦巻いて、「音楽」がどこかに行ってしまった。
時間のやりくり、感情のやりくり、人間関係、私と音楽との関係…どれもとっちらかったまま。
こんな状態で聴きにいきたくない、と私は思いました。
私のミーチャが、見つけられない。
なので、もう一つの用事にかこつけて、逃げました。
そんなわけで、とうとうお祭りに行きそびれてしまいました。


今夜はミーチャがとても遠いです。
私にミーチャの音楽を聴く資格なんてないような気さえするほどです。
でも、お祭りに行きそびれた私は、そんな自分がやっぱり自分らしいような気もするのです。
私は独りで部屋にこもり、そこでまた密かにミーチャに会うでしょう。
いつものように。
今の私にはそれでじゅうぶんかもしれない。
たとえばそれは、内陸で聴くハワイアンみたいに。



SAIL ALONG SILVERY MOON    6-C

SAIL ALONG SILVERY MOON 6-C

  • アーティスト:BILLY VAUGHN
  • 発売日: 2000/01/01
  • メディア: CD