宮田大くんのチェロ・リサイタル

昨夜、地元の星である新進若手チェリスト・宮田大くんのリサイタルに行ってきました。
会場は那須野が原ハーモニーホール。ここ、初めて訪れましたが…
遠いっっ!
同じ県内だしーと思って油断していましたが、このあたりは完璧に車社会なので、公共の交通機関が乏しいんです。
なので、距離的にはたいしたことなくても、「遠い感」がものすっごく強い。サントリーホールより遠かった(気がする)。
ウチの最寄り駅から西那須野までは電車で40分もかかるし、駅からホールまでのバスが1時間に1本だったりするんだもん。
しかも、着いた先は外灯もろくになくて真っ暗で、思いっきり寂しい場所。ひとけもろくになくて、泣きそうでしたよ。
帰れなかったらどうしようと、大人げないことを考えてドキドキしたりして。


こちらがホール外観。


真っ暗な野原に突如として現れる近未来風建造物(?)。
とてもきれいで、美しいホールです。



宇都宮市内のホールとは比べ物にならないくらい音もいいし、見た目もいい。
入口から大ホールまで緩やかな螺旋状スロープで上がって行く形になっていて、大ホールの周りもスロープになってます。バリアフリーは完璧です。
トイレも数が多くてきれい。1Fのレストランも洒落てる感じでしたね。
係員の方たちの対応も丁寧で、とても気持ちがよかったです。
遠くなかったら、ホント、最高なんですけどね。


さて、本題の演奏会ですが、遠くまで足を運んだだけの甲斐がありました!
予想していた以上の、とてもステキなコンサートでしたよ。
まず、曲目などを。

曲目

■ブレヴァル:チェロ・ソナタ 第5番 ト長調
■カサド:無伴奏チェロ組曲
ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタ ニ短調 作品40

アンコール

ラフマニノフ「ヴォカリーズ」
■ファリア「火祭りの踊り」
久石譲風の谷のナウシカ」より

チェロ:宮田大
ピアノ:鈴木慎崇

2007/1/31 那須野が原ハーモニーホール

明るくなった舞台に颯爽と出てきた宮田くんは、そりゃもう、パッと見、チアキシンイチかと思いましたよ。
ますますイケてんですよ〜。
って、オヤジ好きな私はべつに宮田くん個人のチャームに特別な思いいれはないんだけども、客観的に見て、この子は早晩人気出るだろうなぁ〜ってのは感じます。
お相手のピアニスト鈴木くんは、芸大生。落ち着きと貫禄があって、頼りになりそうな雰囲気です(実際、とても頼りになる人でした!)。


演目がショスタコ以外当日までわからなかったので、はじめの2曲は予習なしです。
どちらも今まで一度も聴いたことがない曲。
そういった未知の曲でどれだけ引き込まれるだろうか、というのもポイントでしたね。結論から言えば、どちらもステキでした。
ブレヴァルのチェロ・ソナタは、モーツアルトの時代の曲なので、宮廷音楽の香りがします。軽やかで、華やかな曲。
チェロの表情も、とても繊細で優雅なイメージです。
一方、無伴奏のカサドの組曲はスペイン風の幻想的な曲。野趣に富んでて、イロっぽくて、胸にグッとくる。
チェロの奏法的にもいろんな技術を聴かせる曲のようです。
宮田くんはそりゃもう見事に歌っていたんですが、ここでちょっと気になることが。
どうも演奏中に「カツッ カツッ」と小さな音が混ざるんです。すごく耳障りな、「余分な音」が。
最初は弓か弦がボディにぶつかっているのか?と思ったんですが、そうでなさそう。思いっきり先弓で弾いている(どこにもぶつかってないと確認できる)時にもその雑音が聞こえるし。
ふと思ったのは、あれはもしかしてタキシードのボタンがボデイにぶつかってる?ってコトだったんですけど、真相は不明です。
とにかく私はその音がどうしても気になって気になって、最後はちょっと頭が痛くなりました。
せっかくの演奏が、あのかすかな音で邪魔されてしまって、ひじょ〜に残念でした。


休憩を挟んで、いよいよ楽しみにしていたショスタコです。ドッキドキ〜。
前半はなぜか普段座らない右翼側に座ってしまい、どうも響きが充分楽しめないような気がしたので(舞台真ん中で構えてもチェロのf字孔は客席左翼に向かうので、そっち側に座った方がよく聴こえる)、席を移動しました。ちなみに全席自由です。
ショスさんのチェロソナタは、私の大好きな曲です。
しかも、数日前に読んだ評伝で、ちょうどこの曲が作曲された時期の書簡を読んで多大なる妄想を抱いたばかり(この曲を作曲していた時、ミーチャは燃えるような激しい恋をしていたんですよ〜うへへ♪)。
とにかく今の私にとってこの曲は「大好きなミーチャの言葉(しかも恋の溜め息付き)をじかに聴ける曲」なのです!そりゃもう、大事さ。
気を落ち着けて、ワクワクしながらその最初の一音を待ちましたよ。
それなのに最初の出だしで「ぶしゃっ」と、くしゃみするヤツがいるではないですか!どひゃー。咳も多い。風邪ひいてるならくんなボケ!
なんだか会場もざわついてるし…あーーもーー。がっくり。
でも、演奏そのものはお見事でしたよ。
ショスさんらしい重さが感じられないのがナンですが、そこまで要求するつもりはないですし。
あの若さであれだけの演奏ができるなんて、もう何も言うこと無いです。
大満足でした。
ピアノがまた、良かったんですよ!
この曲はピアノがとても難しいので、実はピアニストのほうを心配していたんですよね。でも、それは杞憂でした。
鈴木くん、素晴らしかったです。この人のタイミングとかリズム感、なによりも「まとめ能力」みたいなもの(?)はスゴイですね。


アンコールは大好きな「ヴォカリーズ」!嬉しかった〜。
でも、2曲目のファリャあたりになると、バスの時間が迫りつつあって気が気じゃない。
これ逃したら次のバスが来るまで寒空&無外灯の中で30分以上待たなければならないんだもん!
で、とうとう最後のナウシカは聴かずに会場を後にしました。
が、結局これ、最後まで聴いてもバスには間に合ったんですよ。あうう(哀)。損したわー。


終了後、偶然知り合ったチェロ弾きの若い大学生のお嬢さんと、家に帰る間中ずっとお話をして帰りました。
「やりたいことがたくさんあるんですよ〜」と頬を輝かせてたくさんの夢を話す若いお嬢さんが可愛くてたまりませんでした。
いいなぁ〜若いって(*^^*)。こちらも負けてはいられないぞ!という気になりましたよ。元気をもらった気がします。
お嬢さんとはまた今月末の宮田くんの室内楽コンサート(ジュピター弦楽四重奏団特別演奏会)で逢いましょうと言ってお別れしました段お話をしない世代の方とも話すきっかけを与えてくれるから、シュミの世界って面白いですね。


チェリストのリサイタルというものを聴きに行ったのは初めてだし、そもそもCDでさえチェリストのアルバムって滅多に聴かないので、比較対象がないのですが、宮田くんの演奏は、とても素晴らしかったと思います。
ただ技術があるというのではなくて、ちゃんと音楽が流れてくるんですよね。
含みを持って、表情豊かに歌う。それはそれはとても心地良いものでした。
強烈ご推薦の若手ですよ!