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テミルカーノフの「バビ・ヤール」、そして絶佳なるレーピン(1)

Concert


生「バビ・ヤール」、聴いてまいりました!
ああ〜書きたいことがたくさんあります。
とにかく、最高のコンサートでした。ホントに行ってよかった。


演目

  1. リムスキー・コルサコフ:オペラ「見えざる町キーテジと聖女フェヴローニャの物語」より序曲
  2. ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 (独奏:ワディム・レーピン)
  3. ショスタコーヴィチ交響曲第13番「バビ・ヤール」<字幕付>


指揮:ユーリー・テミルカーノフ
サンクトペテルブルグフィルハーモニー交響楽団
ヴァイオリン:ワディム・レーピン
独唱:セルゲイ・レイフェルクス(バリトン
合唱:東京オペラシンガーズ

2006年11月24日(金) サントリーホール

いま私がいちばん聴きたい演目が揃った夢のようなコンサートでしたので、そりゃもう、楽しみにしておりました。
息を切らせて開演ギリギリに会場に着く・・・という常態(!)だけは避けようと余裕をもって出かけたおかげで、珍しく開場前に現地に着きましたよ。
アークヒルズ内のショップで買い物をする余裕までありました。
思えばクリスマスまであとひと月なんですね。心楽しい季節です。
こちら↓ホール前のデッキ広場で輝いておりましたクリスマスツリー。
20周年記念の電飾がきれい。

ホールに入ると、通路にショスさんのミニ・写真展(?)のような企画がありました。
50歳以降の写真ばかりでした。もうちょっと若いときの写真があったらよかったなぁー。
こんな感じで↓10枚ほどの写真がありましたよ(写真はモスクワ音楽院のホールで挨拶をしているところ、かな?)。

会場の様子。

今回の席はA席・12000円也。1階の最右翼です。
少し視覚的には偏りますが、音は全くOKです。
オケの編成が大所帯ですので、ステージがめちゃめちゃ狭そうです!こんな窮屈そうなステージ、初めて見たかも・・。
しかも2部ではここに合唱団がどーっと入りますから、さらに窮屈そうでした。


最初の曲は、リムスキー・コルサコフのオペラ「見えざる町キーテジと聖女フェヴローニャの物語」の序曲。
実はこの演目の存在を、当日まですっかり忘れていました・・・オールショスタコプロだとばかり思ってた(^^;;。
なので、なんか得した気分です。
あ、前菜付いてたんだ♪みたいな。
で、この前菜が、予想外に美味しかったんですよ!不覚にも涙が出そうになってしまうくらい。
私の好きな(どっちかっていうと田舎臭い)ロシア風味満点のセンチメンタルな味がしまして。
オケの弦パートが歌い甲斐のある曲というのが私は大好きなんですけど、これはそういう曲でした。
初聴きだったんですが、すーっと気持ちを持っていかれましたね〜。


おいしい前菜で俄然期待が高まったところに、レーピン登場!
ああ!初・ナマ・レーピンですよ〜。感動。
ロシアの猛々しい大男、って感じです。バイオリンがちっさく見えます。腕力強そうだ。さすがジャイアン
ワクワクしながら見つめました。その第一音を聴くのを、こんなに楽しみだったことなどないくらい。
そして聴こえた第一音で、私はもう完全にアナタの虜!
かっこいいい〜〜〜〜〜!ぎゃーーー・・・と心のウチで叫びましたよ。
聴く者の気を微塵も逸らさない勢いのある音です。
澄んでいるのに力強く、覇気があり、生き生きと躍動する急いた演奏。
ああ!こんな演奏で聴きたかったんですよこの曲は!!
テンポ設定も私の好みでした(速すぎ、というくらいが私は好きです)、歌いまわしも、音色も、凄い、凄い!とにかく


凄い!!!


・・・としか言いようがないです。
楽章間で拍手ができないってのが、こんなにストレスになった事なんて今までありませんでした。
レーピンはとにかく走って走って走りまくるので、オケが付いてゆくのがやっとです。
オケはもちろん必死でついて行くんですが、それでも振り落とされそうです。
いや、途中何度も振り落とされていました(爆)。
ファゴットは呼吸困難寸前でしたし、ホルンはみんな後ろからついてくのでやっとやっと。弦の拍も合わず、打楽器もちょっと間が抜けて聞こえます。指揮者も帳尻を合わせるのにいっぱいいっぱいって感じでした。
それなのに・・・それなのに素晴らしかったんです!
なんで?!・・・って感じですけど、そういうこともあるんです。
それだけソリストの魅力が強かったということかもしれません。


オケはきちんと音を揃えなきゃダメだとか、和音が命だとか、そういうところに価値を見い出して良し悪しを語る人もいるでしょう。
でも、私は今日の演奏ではっきりわかりました。
合わせるだけが音楽じゃないですよ。音楽は、歌なんです。
そこにしっかりと歌があれば、破綻もひとつの魅力となりうるのです。
もちろんそれは微妙な問題だと思うけど・・・それでも、勢いや熱が説得力となる演奏はあるんです。
しかもレーピン単体は信じられないくらい超絶に上手かった!
あのカデンツァ!
魔物が取り付いたみたいな、ありえない演奏でした。
こんなヴァイオリンを聴けただけでもそりゃアンタ、奇蹟ですよ。
たぶん、ショスさんのV協を弾かせたら、この人の右に出るヒトはこの世にいないと思います。つまり「世界一」のV協を私は聴いたんです。


ああ・・・至福!


ソ連の音でした。
ショスタコーヴィチの音でした。
オイストラフみたいなオーラがありました・・・って、古びたビデオでしか見たことがないオイストラフよりも、目の前のレーピンはよほど奇蹟でした。
それを聴けた私もすごい。運がよかった。サプライズです。
この曲を、こんな風に弾ける人がいることを、草葉の陰でショスさんも大満足していることでしょう。
たぶん、ショスさんの弾いて欲しい通りにレーピンは弾いているような気がします。せっかちだったショスさんの言葉が、そこにあるような・・・
いや、わからんけど・・・そんな気がしたの。
レーピンの演奏するこの曲を聴いて、私は初めて、ショスさんが表現したかったものが見える気がしたんですよ。


演奏が終わった時、会場は拍手の嵐でした。
私も両手を高く上げて渾身の拍手をしたさ〜。・・・腕が疲れましたよ・・。
割れんばかりの大喝采の中、テミルカーノフはレーピンを抱きしめ、満面の笑みで、その頬にキスをしました。
その瞬間、イカツいレーピンがフイっと神童の頃の可愛い子どもの表情で嬉しそうに微笑んだ気がして・・それが妙に印象的でした。
その場その場が勝負の演奏家にとって、演奏を終えて満場の喝采に包まれている時が一番幸せなんだろうなぁ・・・。
小さな頃から毎日こんなことをやって生きてきた男の人生を思うと、壮絶さに目が眩む思いがします。凄い人生だ。ブラーボ。


長くなったので続きます。