キエフオペラの「アイーダ」

ドキドキワクワクの初オペラ、行ってまいりました。
予習もバッチリ。余裕だね。


演目

ヴェルディ:歌劇「アイーダ」全4幕

ウクライナ国立歌劇場オペラ
管弦楽キエフ・オペラ管弦楽団
合唱 : キエフ・オペラ合唱団
バレエ : 国立キエフ・バレエ団

2006年11月11日 栃木県総合文化センター


席は最安席の天上桟敷。右翼の4F席です。
ここ、席まで歩いてゆくのがすでに怖い!
手すりの位置が低くて、ちょっとつまづきでもしようものならまっさかさまに下に落ちそうで。
ひーーー恐怖!(←高所恐怖症)
でも、こんな席でステージ見るのは初めてでしたので、なんだかワクワクしました。
私の席付近からステージを見るとこんな↓感じ。
(でも、これはのり出した状態。座席からはステージ右端は隠れて見えません)

オケピ(オーケストラ・ピット)が真上から見られます!うきゃー。大興奮!!!
ステージよりもオケピが気になって気になって。準備している様子なども、観てて飽きないんですよねぇ。


始まりはとにかく息を呑むほど、ステキでした。
場内が徐々に暗くなると、オケピの中だけがぼーっとほのかな明かりに浮かぶのです。
譜面台だけに手元ライトが灯り、それを上から見ると、深い闇の中でオケピ全体が蝋燭の明かりをフワッと浮かべたお船ように見えるんですよ。
これがもう、たまらなくロマンティック!
そして細いバイオリンの旋律から始まる麗しの前奏曲が流れてくるんです。


はうぅぅぅ〜。
トロけますよ…シアワセ。
来て良かった…と、しみじみ。


オケピから聴こえる音はたまらなくステキでした。
囲いの中で弾いているから、音がダイレクトに伝わってくる感じではなくて、少しこもったようなまろやかな音になってこちらに伝わるような気がしました。
これが「オペラの音」なのかも。オケ本来の音の聴こえかたとは違う。
そこは少し、オケの音を聴きたい人間からすると「邪道」なのかもです。
でも、この音が好きだという人の気持ちはとてもよくわかる気がします。
純粋音楽とオペラというのは思いのほか受け取る感覚が違うように思いました。
オペラには何でもある。音楽も、物語も、視覚効果も、歌も、踊りも、モードも、そこにいる人間のチャームも。
で、何でもあるから楽しいのだけれど、何でもあるからそれぞれの存在感が相殺しあうような気もします(もちろん相乗効果もある)。
何を楽しむかは人それぞれで、ものすごくキャパが広い気がします。総合エンタメの楽しさ満載です。
なので、クラシック初心者にもオペラはとても入りやすい入口だと思います。お値段的には入りにくいものですが(汗)。


1幕目の清きアイーダ〜「たて!ナイルの川の聖なる岸辺に」〜アイーダの独唱の流れは、グッとキました!
アイーダ役の方は演技も歌もすごく良かったです。独唱での表現力はすごく迫力ありました。
ラダメスは、ちょっとヌボーっとしてて、見た目の雰囲気がイマイチ精悍さに欠ける感じでしたかね(ちょっとおバカっぽい)。歌は良かったですが。


2幕目の最初(ハープがステキなのだ!)から、オケの音がいきなり「え?ロシア?」という雰囲気になったのには驚きました。
予習の時にはそんなこと全然感じなかったんだけど、オペラ団がウクライナだということでやっぱりどことなしにそういう匂いがあるのでしょか?なんか、ものすごいロシア風味だったのよ。
つか、もともとこの部分のセンチメンタルな旋律って、ちょっとチャイコフスキーっぽいかも、とも思ったりもしますが。
で、「あ、ロシアだ」と感じてしまったら、途端にロシアのオペラが観たい(聴きたい)なぁ…という気持ちが湧き上がってきてしまいました。こうやってオペラの魔力にとりつかれてくのか?怖いひー。くわばらくわばら。
打って変わって2幕目2場はイタリア魂全開。「アイーダ」最大の見せ場の部分です。
天上で軍神のラッパが鳴る「凱旋行進曲」!ヒデが口ずさんでサッカーの曲になっちゃった(らしい)やつね。華やかです。ちょっと顔を覗かせたロシアはこの時点ではカケラも見あたらなくなっておりますよ。


2幕目が終わるまでは純粋に楽しんで見ていたのですが、だんだん不安になってきました。
というのも原因はやはりその時間の長さです。
1幕が終わって20分の休憩。
で、2幕目が終わったあとも20分休憩。
その時点でちょっと焦りましたよ。
3幕目が終わってまた休憩があるのだろうか?幕間にいちいち20分待たされるのか?待ち時間だけで計60分?!そしたら終わるの9時回るぞ?と。(注:開演は5時です)
結局、3幕と4幕は続けてやったのですが、それにしても長い!
「私の人生にはオペラを見る時間は”まだ”、ないよ」ということをこの時点でちょいと感じましたよ(汗)。
そりゃ長い時間をかけてゆっくりと芸術を楽しむのは醍醐味だと思いますよ。とってもシアワセな体験だとも思う。
でも、今の私にはもう気が揉めて気が揉めて。*1
やることいっぱいあるのになにこんなところで油売っているのか?とか、時間のないアンタがなんでテーベの都の物語に逃避してんのか?とか、ついつい思ってしまうんですな。貧乏ヒマなし、みたいな精神構造(涙)。
というわけで、3幕目4幕目あたりは、最初の楽しさはどこへやら、時間が気になって仕方ありませんでした。


それでもオケピの中を見ているときはしばし時間を忘れられました。
オペラグラス持参で行ったのですが、それを使って見ていたのは舞台ではなくてオケピの中ばかりでした。
この管弦楽団は美形が多いんデスよ…うふ。
年配者も多いんですが、皆さん、味がある雰囲気で、イケてんのです。女性も。
指揮者は絵に描いたような太っちょさんで、ロスコー・アーバックルみたいでした。それがものすごくオペラっぽかった。金満…って感じで(ゴージャスだということですよ)。
イングリッシュホルンの人がボロちゃん風味だったので、ついつい観察してしまいました。
とにかくよくしゃべる人で、休憩時間に入るとすぐに隣のクラリネット氏と延々とおしゃべりすんの。バイオリンの美女と爺さんも演奏時以外はずーーっとしゃべってましたね。仲の良さそなオケです。
トランペットはフツーのでした。アイーダトランペット(長いヤツ)が見られるかと思っていたんですけど残念。


ビックリしたのはオケの撤収の早さです。
演奏が終わり、カーテンコールの緞帳が上がった途端、満場の拍手の中、クラリネット氏がクラリネットを分解し始めたのには驚きました。
オーボエはそそくさとリードを抜き、バイオリンはさっさと楽譜を閉じ、コントラバスに至ってはすでに楽器をケースに収納し始めてます!
早っ。
皆さん、電光石火の撤収っす(笑)。1分たりとも残業しません。ロシア人の鑑!か?
私はオペラグラスでクラリネット氏をピンポイント観察しておりましたが、クラリネット氏は1回目のカーテンコールでクラリネット内部の掃除を終え、2回目のカーテンコールで楽器をケースに収納し、3回目のカーテンコールの最中に席を立ち、ボロ似のイングリッシュホルン氏とおしゃべりしながら帰ってゆきました。頭の上では指揮者と歌手たちが満面の笑顔でカーテンコールに応えているというのに!でもってその時点でオケピはほぼカラの状態でした。
オケメン、ある意味ブラーボw
私も走って帰ったさ!


会場の客層ですが、圧倒的に老夫婦が多かったです。あっちにもこっちにも老夫婦。おまえ100までわしゃ99まで…といった共白髪カポー満載。
次に多かったのはオバさん3人組。そして若いカポー、女性2人組、爺さん単独、女性単独(←アタシはココ)、クラヲタ単独…と続く感じっすかね。小学生連れファミリーも何組かいました。
オシャレは…誰もフォーマルなんて着てきてないじゃないですか!フツーの服です。考えてみれば当たり前。だってここは栃木(の県民施設)。ウィーン国立歌劇場ではありませんのでね。
私もセーターに革ジャン、タイトスカートにブーツでした。

*1:基本的に歌劇の長さは我慢できるんです。ていうか、それ見に行ってるんだし。でも、休憩時間ってのが嫌いなんですよー。ま、そんなこといってもしょうがないんですけどね。しかもそれが2回あった時点でドッと疲れが。