お誕生日


今日はマエストロの69歳の誕生日です。(古希だ古希だと言ってますが、古希になるのは来年です。)
好きなジャケ写をちょっといじって祝ってみました。若い頃の手です。ステキでしょうぅぅ。


お誕生日記念企画として何をやろうかずっと考えていたんですけど、ごくスタンダードに好きなアルバムベスト5などを選んでみたいと思います。
といっても、まだ好きになって3ヶ月くらいしか経っとらんので、膨大にあるアルバムのごくごく一部しか聴けておりません(汗)。「ベスト」っつっても「3ヶ月かそこらで聴いた中の私のお気に入り」程度の話です。ま、それでも私なりに思い入れがあったりするので、そういうのを記しておきます。


好きなアルバムベスト5


ベートーベン:バイオリンソナタ「春」「クロイツェル」(パールマン

私がボロージャ落ちした記念すべきアルバム。
アシュケナージの存在はそれ以前から旦那がよく聴いていたせいで馴染み深かったのですが、好きでも嫌いでもないごくフツーの存在でした。
それよりも私はパールマン(の音)が大好きで、このアルバムもパールマンのアルバムだという認識だったんですよね。
聴いたらあまりの麗しさにびっくり!
大好きなアルバムとなり、来る日も来る日も聴きました。
まずはパールマンの音にうっとりし、次にこのコンビネーションの美しさに心を打たれ、やがて相方のアシュケナージに興味が移り、今に至るわけです。
ジャケ写のパールマンはかわいそうなほどヘンな写真です(ホントはもっとカワイイ)。
アシュケナージはここではウソみたいにかっこよく。そのビジュアルにもヤラレてしまいました。それが単なる錯覚だとすぐに気がつきましたが時すでに遅く…惚れた後はアバタもなんとやらですw
全集は日本では手に入れ難いですが、米国アマゾンなどではフツーに売ってます。素晴らしい全集なのでオススメ。
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ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番&第9番


ベートーベン:ピアノ3重奏全集(パールマン、ハレル)

アシュケナージパールマンの黄金コンビにメロメロになった私が次に手を伸ばすのは当然ここです。
黄金コンビにチェリストのリン・ハレルが加わって、黄金トリオになりました。
トックリ・トリオだね(笑)。
この3人は共通した雰囲気があります。
優等生で品行方正で和やかで優しくてフレンドリー。
つらい過去の経験を乗り越えた人たちばかりですから、無菌培養では培われない人間味が備わっているのかもしれません…てのは穿った見方でしょうけどね(^^;;。
アシュケナージは亡命経験者、ハレルは早くに両親を失い苦労し、パールマンは小児麻痺で足が不自由…なのに3人ともなぜかとてもシアワセな顔してシアワセな音楽を演奏するのです。そこに、逆境の中でも音楽を愛し選び取ってきた心を感じます。
この3重奏は、3人が均等の距離でもってきれいなトライアングルを作り、そこに心安らぐパティオがあるような、イメージです。
破綻のない演奏でありながら窮屈じゃなく、どこか陽性の魅力に溢れていて、何度聴いても飽きません。
ベートーベンもきっと満足してるに違いないと思います!
(廃盤)


アシュケナージ、ロシアでの最後のコンサート1963

詳しくはこちらのエントリに書いてあります。
とにかくドラマティックなアルバムです。
その背景を知らずに演奏を聴いただけでも、心をガシッと鷲掴みされるような凄味がありますが。
とにかく、彼が紛れもなく真の芸術家であり二人といないジーニアスであることがよくわかり、胸を打ちます。
若い頃のアシュケナージはこんなに豊かな情動を伴った演奏をしていたんだなぁ…と、ドキドキします。泣けてきます。特にショパンのバラードは秀逸です。
(廃盤)

ラフマニノフ・トランスクリプションズ

ラフマニノフから何か一枚と思ったのですが、ドディさんに敬意を表して(笑)、これを選んでみました。(このアルバムには息子・ヴォフカ君と妻・ドディさんが参加してます。)
ラフマニノフがピアノ用に編曲スコアを書いた名曲集に(ラフマニノフの)オリジナルが加わった形のアルバムです。名曲集のほうは有名どころが揃っていて、楽しいです。まさに「盛りだくさん」という感じ。
ラフマニノフシューベルトメンデルスゾーンアバンギャルドに変えていて面白いですよぅ。
凡庸なバイオリン練習曲でしかないというイメージのクライスラーの「愛の喜び」もラグタイム風にセンス・アップして生まれ変わっております。
終盤、「イタリアン・ポルカ」でのいきなりなラッパ登場で一気にキーストン時代のハリウッド風味に、そして「星条旗(よ永遠に)」で閉め、というのがまた茶目っ気いっぱいです。アメリカ万歳!みたいな。
でも、その前に収録されたロシア風味の一連の小曲で郷愁が煽られているので、なんだか最後はヤケッパチ、という感じでもあります(笑)。
「ロシアに帰りたい…帰りたいけど帰れない。しょうがないから我慢してアメリカにいよう…」みたいなラフマニノフの諦めの境地が皮肉っぽく現れてるといったような。
全体的に、時代の匂いというか…大戦間時代の空気感が濃厚にあるのがイイです。
ラフマニノフにあらためて惚れ直しそうな一枚です。そこにはよき代弁者としてのアシュケナージがおります。
アシュケナージのピアノは美音で、すぐ隣で弾いているような臨場感があります。録音も良い。


R・シュトラウス:「ドン・ファン」「イタリアより」(クリーブランド管)

最後に指揮モノを一つ。
私はR・シュトラウスがめっちゃ好きです。中でも「ドン・ファン」は特に好き。
いろんな人のドン・ファンを聴いていますが、このアシュケナージクリーブランド管)を聴いた時はちょっと苦笑しました。
「なんじゃこのせわしなくて落ち着きのないドンファンはw」と。
しかし、これに聴きなれるとそれまでスタンダードだと思っていた演奏(たとえばマゼール(NYフィル)やサヴァリッシュフィラデルフィア管)などの)が、どことなし愚鈍で間抜けに感じるようになってしまいました。
まだ若いシュトラウスがものすごく前向きな気持ちで作った、「どうだ、これ。スゴイだろ?」な音楽であるはずのこの曲の意気揚々とした清冽な空気は、アシュケナージの指揮でより的確に再現されているように思います。
これは、晴れた日に降る通り雨のような、七色の虹を内包した爽やかで清々しいドンファンです。
アシュケナージ本人もこの曲が好きなようです。
そういわれてみれば、ひたむきな愛情を感じる演奏でもあります。
併録の「イタリアより」も最高。幸せな気分になります。
(廃盤)


って、5枚程度を選んでも全然アシュケナージに触れられていない気がしますが。
私が聴いているのは膨大なレコーディングのごくごく一部で、まだ彼のことを知らないも同然です。
これから一生かけても全部は聴けるわけないし、そもそもそこまで私の情熱ももたないと思いますが(爆)、彼の音は、今ここにともにある私をとても励まし、シアワセにします。それでもう、じゅうぶんです。
ボロージャ。どうか健康で、うんと長生きをしてください。願いはそれだけです。
お誕生日おめでとう!!