マエストロと過ごす夕べ(その3)

(昨日の続き)
コンサートは終わりました。
喝采に包まれて、マイマエストロボロージャは舞台袖に去ってゆきました。


しかし、私には一刻の猶予もないのであった。
なぜなら、まだお手紙が書き終わってない!!ひー。早くしないとボロージャ帰っちゃうよぅ(汗)。
お帰りのお客様の波を傍らに見つつ、ホワイエで最後に封筒の表書きを…「To maestro A…As…」…あ、あれ?(汗)毎日書いているはずの綴りがわからない!アシュケナージってどんな綴りだったっけーー(←叫び)。*1


そんなこんなでやっと書き上げた手紙を入れたプレゼントの袋を抱えて、扉口に佇んでいる係員のところに行きました。
ものすごくバイト君くさーい係員です。
「あのーマエストロ・アシュケナージにお渡ししたいものがあるのですが…どうしたら…?」
と、私が訪ねますと、バイト君は思いっきりいぶかしそうな顔で、
「えーっと、お名前を教えてください。」
無線機片手にイキナリそんなことを言う。
「は?私の名前ですか?それ、言わなきゃならないんですか?(言っても意味無いのでは?)」
「お名前うかがわないことには…。こちらにもいろいろとあるんで。アポイントメントはとってありますか?」
「え?(あるわきゃねーよ。見りゃわかるだろう、単なるオッカケだよ。)…無いです…よ?」
「アポイント、無いんですか?で、渡したいものとはなんですか?」
「プレゼントですけど…こういうの、アポないと渡すこともできないんですか?」
ここで私がちょっと不満そうにそう言うと、すかさずバイト君は無線機で、おもむろに他の係員を呼び出しはじめるではありませんか。


「えー。こちら○番扉前です。至急こちらまで来て下さい。お客様が…」


なんだかなぁ。楽屋に強行突入しようとしてるわけでもなし、「会わせろ」とダダをこねているわけでもなし…ただ単にどうすりゃブツを渡せるか聞こうとしただけでこんなに足止めくっちゃって、これって何?
NHKホールって、こんな簡単なファン扱いもできないのですか?
てか、どこにでもいる山のような楽屋出待ち族はどこにいちゃったの?ここには人っ子ひとりおりませんが。エヌ響ってそんな人気ないのか?ホールの態度がこんなだからファンも遠ざかるのでは?それともみんなアポありか?←ありえん


ほどなく、連絡受けたらしい係のオネエサンが慌ててとんできました。


「どうしました?!(←危機感満ち溢れる表情)」
「あのぅ、マエストロに渡したいものがあるのですけど、どうすればいいのかと…。」
「ああ(←あきらかにホッとした表情)、それでしたら受付のものがおりますので、こちらへどうぞ。」
と、にこやかに誘導してくれました。
ほらね?普通そうだろう?んもう!


ロビー受付にはNHKの職員という方がおりました。
エストロに渡して欲しいものがある旨を話すと、
「あれ?もしかして、もう帰っちゃったかも…」
なんてことを言うではありませんか。


おーーーい(汗)
あのバイト君のせいで時間かかったからこんな事態になってんじゃないのか?(それより自分が手紙書くのが遅かったせい、とも言えるのだが(爆))

でもその受付係さんは、間髪おかず「ちょっと行ってきます!」と言うなり、急いでブツを抱え、走って楽屋まで行ってくれたのです!なんと優しいお方!しかもイケメン。
しばらくして戻ってきたイケメン氏は手ぶらでした。


「マエストロ、おりましたか?帰ってませんでしたか?」
と、私が尋ねますと、
「大丈夫です!ちゃんとお渡しできましたよ。」
ニッコリと、そう言ってくださいました。


嬉しい〜!!ありがとうございますぅぅ(感涙)。あなたに託して良かったです!
あなたとマエストロのために、今後も確実に受信料払い続けますよ!ステラも買います!ぐーチョコランタンのグッズも買います!


とはいえ。
ホントのところ、マエストロに手紙を渡したのは「余分なこと」だったなぁ…って感じてんですよね。ま、物事を後悔するのは性に合わないので、もはやどうでもいいんですが。
あの手紙を読んだマエストロは、きっと私のことを好きにはならないだろう、と思うのよ。悪くするとムッとするかもしれないなぁ…と。
だって、ファンレターとはいえ、私はピアノ弾きとしての彼を褒め称えるばかりで、それを待ち望んでいるという主旨でお手紙書いたんだもの。
でも、コンサートを聴いた後は、それが今の彼に対してどれだけ失礼なことを言ってるのかがわかったのです。
あんなに真剣に指揮者として生きている人に、「あなたのピアノが聴きたい」は、なかろうよ…と。
いや、たとえ聴きたくてもさ。ってか、私は聴きたかったから、懇願したらあるいはいつか考えてくれるかと思って…だから今回はどうしてもそれを伝えたかったのでお手紙書いたのですが…今はそんなこと言うべきではなかったと思う。
でもさぁ、私も彼の指揮がスゴイのを今日初めて知ったんだもん(爆)。
TV見てる限りではべつにどうということもなく見ていたし…ピアニストとしての彼のほうが好きだったんだもん、しょうがない。
ああ…それにしてもさ。ごめんね、ボロージャ。なんてイヤなファンだろうね。
でも、弾き振りするっつってチケ売ったのにピアノ弾かないボロージャも悪いんだよ?だからおアイコだね(笑)。
バカなファンがいる、と軽く笑って気にしないでいてくれたらいいな。
ま、ファンの行動なんてこんなもんです。


なにはともあれ、すべて終了した後のポッカリとした脱力感と満足感とに包まれた最高の気分を抱えて、しばらく出口付近にたたずんでいました。
夕暮れの空に、雨上がりの涼しい風が吹き始めていて、ホールに入る前の蒸し暑さは消えていました。


楽団員の皆さんは一般客が出てゆくのと同じ出口から、客がハケるのと同じくらいの速さで帰ってゆくのね(笑)。
奥さんらしき人と待ち合わせして帰る人もいました。こういうとこ、すごくフツーなんですねぇ。
すぐ近くにナニゲにビオラのタナムラさんがいたりなんかして、ギョッとしちゃいましたよ。
スターじゃないんかい?違うのか?
でも、いつもTVで見る人がフツーにそこにいると軽く驚きますね。田舎モンか、自分。
それにしてもみなさん帰るの早いなぁ〜。打ち上げとか打ち合わせとか何にもないんでしょか?
ボロージャもそそくさと帰るのだろうか?ていうか、楽屋にはドディがいるよね?!←今気づいた。「ドディによろしく」と一言書いておくべきだったわ。


私らも会場を後にして夕間暮れの渋谷の街へとくりだしました。
軽くディナーを食べながら今日一日のことを話すシアワセ。
えっとーなんていうお店か忘れちゃったけど、ここもとても美味しかったです。
しかもおごってもらっちゃって(^^;;(ジマさん、何から何までありがとう!)今日はホントにステキな日でした。
忘れてはならないのは、おウチで留守番をしてくれている家族です。このシアワセは、他の誰よりも家族からの贈り物なんですよね。心から感謝。ありがとう(*^^*)!


コンサートは過ぎ行くけれど、終わりは次の始まり。
今日からまたカウントダウンの始まりです。
次回ボロージャに逢えるのは9月。秋分の日です。
あと3ヶ月!
待つことの楽しみを思うと、これは丁度いいスパンかも。
3ヶ月で、もうちょっとまともな聴衆になりたいものですっ。


そうそう。コンサートのプログラムを書くのを忘れていました。

演目

武満徹/3つの映画音楽から
      「ホゼー・トレス」〜訓練と休息の音楽
      「他人の顔」〜ワルツ
武満徹/オーケストラのための「波の盆」
モーツァルト/ピアノ協奏曲第12番
[アンコール]・・・バッハ「羊は安らかに草を食み」

ブラームス/交響曲第1番
[アンコール]・・・ブラームス/ハンガリー舞曲集第1番


N響創立80周年記念演奏会
(2006/6/25 NHKホール)

*1:毎日何度もパソコンで打っている文字でも、いざ紙にペンで書こうとすると綴りを覚えていないモンなんですね(汗)。漢字も同様に書けなくなっているし…マズイなぁ〜。