「ソヴィエト・エコーズ」Vol.1 遺産の影に

laforumさんのブログ(「モメ」)を読んで、めっちゃ欲しくなってしまったDVDを入手しました。(入手したのは眼病前ですがエントリが今頃に・・)
購入動機はもちろん「若き日のアシュケナージが見たい!どうしても!」です。
laforumさん曰く、
「高校三年生のちょっぴりすましたヴォロージャ君と、頭ぼさぼさのコンクール出場中のウラジーミル青年と、すっかり貫禄なアシュケナージ氏の変遷が見られる」
とのこと。
うひゃぁ。そりゃもう、期待に胸を膨らまして見ましたとも!


DVDのオープニング(っていうか、シリーズ・タイトルですね)はいかにもソ連、といった感じの哀愁が漂ってます。
クレムリンを向こう岸に見たモスクワ川の滔々たる水量!もうこの数秒のシーンだけで胸に込み上げるものが。
70年に及ぶソヴィエト時代の芸術家の映像は、今でも膨大な遺産として残されているということですが、当時、当局から(反体制の芸術家の記録を抹消せよという)焼却命令があったりしたものもたくさん現存の中に含まれているんだそうです。
それらは資料保管担当者が自らの「人としての」使命として政府の命令を無視して苦心して現在まで残してきた貴重な映像なのですよ。
つまりこれらのフィルムはソ連芸術界の遺産であると同時に人間の良心の賜物でもあるわけです。それを思うと感無量ですね。


保管された膨大な資料が詰まった資料庫からまず飛び出してくるのはショスタコーヴィチの演奏。
楽家が各地の労働者や青少年の集団の前で愛国の歌を歌う姿では、聞き入る大衆の圧倒的な数が全体主義国家を象徴しているようです。子供たちは皆、スカーフを巻いたピオニールの制服を着ている。*1
そして往年の名演奏家たちの姿。オイストラフリヒテルドニゼッティストラヴィンスキーロストロポーヴィチ
書いているときりが無いので、以下、アシュケナージの部分だけ書きます(って、めちゃくちゃな端折り方ですね。すみません(汗))。


まず登場するのは現在のマエストロです。*2

着ているのはサーモンピンクのトックリ。相変わらず袖まくってます。って、要するにサイズが大きいのでは?(そのわりにピチピチですが)
エストロのお話は、すでに聞き飽きた感のあるソヴィエト時代のエピソードなど。KGBに頼まれてスパイの仕事をさせられてたけど協力しなかったとか、圧力かけられてチャイコンに出ざるを得なかった、チャイコフスキー好きじゃないのにetcという話ですね。
これまた口癖のようによく言ってる「人生は一度しかないかけがえのないものだから」という言葉も出てきます。
でも、何度聞いてもこの人が言うと、とても貴重な示唆のように思えるので不思議。そんだけ無駄のない人生を送っている見本みたいな人だと思うんでね。


お次はさかのぼって18歳の紅顔の美少年、1955年の映像(数秒)。

ショパンコンクールに出た年のものですね。
これはちょっと王子様かもしんないです。でも私のツボではないんですよねぇ。
ひょろっとした線の細そうな少年です。ピアノを弾く仕草も優雅な感じ。


お次はその7年後。1962年の第2回チャイコフスキーコンクールの映像。25歳の時のものです。

これこれ!これが見たかったのです私は!
エストロ、若いですっ。最高にキュートだ!はぅ(惚)。
しかも私の大好きな(そしてボロージャ君自身は大嫌いな)チャイコのPC1番を弾いています。
3楽章の冒頭部を弾く時のリズミカルな演奏は最高に魅力的。そん時にぴょんぴょん跳ね上がる前髪にもホレボレ(どうも私は演奏中クセのついた髪が跳ねる人が好きなようだ)
laforumさんもブログで言っておられましたが、深刻そうで重厚なオケの皆さんを前にして、一人軽々と浮いてるイメージです。
飄々としてて、ちっとも深みがないっつーか…ものすっごい若造ぶり。ソ連の人間じゃないなオマエ?って感じ。
お辞儀さえしっかりできてない。テキトーな感じ。落ち着きなくぴょこぴょこしてるのは今とおんなじです(笑)。
カワイイなぁ。
でもこのときもう彼はパパなんですよね(長男のヴォフカは1961年生まれだから)。若くて才能豊かなパパ…ステキだなぁ♪
その後もずっと彼は良き家庭人ですが、そういうところももう好感度高いっていうかね。って、べつに好色指揮者だってそれはそれでいいんだけども(デュトワさんとか(笑))アシュケナージがそれじゃやっぱキャラ違うし。


私はこれ見てやっとわかりましたよ。この人に惹かれるのはこのカワイさゆえなんだと。別に音楽性関係ないんだよね。
って、音楽がどうでもいいというのではなく、好きじゃないというのでもなく…単に私は彼の音を(わりと聴く機会が多いというのに)いまだに判別することさえできないので何も言えない、というだけの話です念のため。
もちろんすごく好きな演奏もあるし、そういう曲に出会ったときは本当に嬉しいのですが、ピンとこない曲も多々あります。同じ曲なのに演奏全然違ったりとかもあるし。
音楽でとらえようとするともうアシュケナージは茫洋としすぎてて手に付かない気がします。だからあえて考えない。無心で聴くのみ。
ま、そういう意味での「音楽性関係なし」です(^^;;。


ボロージャは、私にとってのお気に入りキャラなんですよね、きっと。極端な話、「キティちゃんが好き」とかそういう感覚に近いのかもしんない。
なんかもう、そこにいるだけで頬がユルんじゃうんですよ。嬉しくて。

*1:このDVDとは関係ないですが、アシュケナージキーシンもピオニールの制服姿の写真がありますね。ああ、ソ連の子供だったのだなぁと感慨深いです。まるでオーダーメイドのごとく制服姿が板についているキーシンに反して、アシュケナージはこの制服がものすごく似合わず、浮きまくっている様子がまた可笑しいです。

*2:画像出典はみなこのDVDです。参考画像として摂りましたがなんかあったら言ってください。